マメダ(豆狸、4.8キロの雄、写真左)、アヤメ(菖蒲、4キロの雌、同右)。2匹は一緒に生まれた兄妹で2歳半だ。
 実は、2匹は八十路近い独居の私を案じる友からの借り物で、お泊まりペットであり、派出ペットである。
 最初は毛色の違いしかわからなかったが、個性がはっきりしてきた。アヤメは軽やかにすんなり育ち、マメダはむっちりして物に動じない風格すら漂う。
 廊下を歩く足音にも軽重があり、甘え方も違う。
 万事マイペースのアヤメはいきなり甲高くミャーミャーと訴えながら全身ですり寄り、私の眼鏡がはね飛ぶほど顔をくっつけてくる。
 そうすると直ちにマメダが現れて、間に分け入り、アヤメに取って代わる。彼はミャンと一声発するやゴトンと音がするほどの勢いで床に身を投げ、四肢を伸ばして下から見つめる。
 外出から帰った私を迎える時は一騒動だ。特にアヤが先陣を切ろうとすると、遅れたマメは彼女の後ろから馬乗りになり、後頭部をぱくりとかんで放さない。
 バッグを放り出した私はマメの口を懸命にこじ開けることになる。
 また2匹は、週に1度ほどの狭い庭の散歩が大好きだ。アヤは草を食べることに夢中、マメは捕虫に目の色を変えている。庭遊びの後、決まってアヤは全身を震わせて嘔吐する。草まじりの毛玉が出て落ち着くと、それを待っていたかのようにマメが近付き、妹の頭や顔を優しくなめてやる。
 わが家にはがらくたがいっぱいだ。その物陰に潜み、2匹は互いに相手を狙い襲いかかる。椅子から机、水屋や冷蔵庫、書棚の上まで駆け回り、追う身襲われる身は時によって交代する。
 毎朝、私の布団の上でぴったり寄り添って静かに眠っている2匹を見ると、今日も元気でありたいと思う。

(中村淑子さん 長崎県/79歳/無職)

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