第1049回 いつもひょっこり現れたブチ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

第1049回 いつもひょっこり現れたブチ

バックナンバー

このエントリーをはてなブックマークに追加

 気がつくと庭の片隅に座っていた白と黒の模様の猫。11年もわが家に通ってきたので「ブチ」と名付けた。
 彼は体に触れられることを嫌い、1歩近付くと1歩退く。人間を警戒していた。
 ある日、ブチがケガをして足を引きずりながら、わが家の猫「さくら」と一緒に帰ってきた。ストーブの前に置いた桶の中に毛布を敷いてやると入って寝た(写真右。左はさくら)。
 目が覚めるとごはんを食べ、トイレをすませてまた寝る。砂をかけ、トイレの後始末をするのはさくらだった。
 夫婦でもないし、兄妹でもない。なのに喧嘩もしない。よその猫がさくらを威嚇すると、どこからか現れて追い払う。不思議な関係だった。
 ブチはいつの間にか近所のYさん宅で小屋を作ってもらい、そこで暮らすようになった。そこでは違う名前で呼ばれ、ごはんや薬、サプリメントももらって可愛がられていた。
 しかし、ブチは1年ほど前から少しずつ弱りはじめた。この春、2、3日来なくて心配していると、夕食の時間にひょっこりと現れた。台所の戸を開けると、いつも私が座る椅子に乗った。初めてのことだった。好物のタイの身を箸で取ってやると、2口だけ食べた。
 翌日の夕方、Yさんから息遣いがおかしいと連絡を受けたので出かけ、声をかけると細い声で鳴いた。一度も触ったことのなかった体を思いきってなでたら、温かくてほっとした。
 翌日、夫と様子を見に行き、夫が声をかけてなでると大きな鳴き声を数回たてた。私はただただ心の中で祈ったが、明け方に亡くなった。
 桜島が見える丘に、Yさんのご好意で他の猫たちと一緒に眠ることになった。これでブチも寂しい思いをしないですむだろう。

(松山政子さん 鹿児島県/60歳/主婦)

【原稿募集中!】
「犬ばか猫ばかペットばか」では、みなさまからの原稿をお待ちしております。
原稿は800文字程度で、ペットのお写真を添付のうえ、下記メールアドレスまでご送付下さい。
必ず名前、住所、年齢、職業、電話番号のご記入をお願い致します。
尚、掲載は本コーナーと「週刊朝日」の誌面となります。謝礼は6千円。
mypet@asahi.com
※著作権は本社に帰属します


(更新 2013/10/31 )


バックナンバー

コラム一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい