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第44回 ぽっくり逝く

文・大谷由里子

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マンガ/上大岡トメ

マンガ/上大岡トメ

 奈良には、「大往生ができる寺」として有名な、通称「ぽっくり寺」こと「清水山 吉田寺」がある。

 下着などを持っていって祈祷してもらって、その下着を着けていると、長患いせずにぽっくり逝けるらしい。

 そして、最近、このお寺が大人気らしい。

 もともと奈良に住んでいたわたしとわたしの家族。

 わたしの祖母は、わたしが小学生のころからこのお寺に行って祈祷してもらっていた。

 下着を持って帰って祖父に着せていた。

「誰にも迷惑かけずにあの世に行くのよ」と、いつも祖父に言っていたし、自分にも言い聞かせていた。

 小学生のわたしには、その気持ちはわからなかった。

 しかも、祖父母が大好きだったわたしは、

「そんなこといわずに、ずっと生きていてよ」

 と、いつも言っていた。祖父母は、笑ってわたしの話を聴いていた。

 そんな祖父は、わたしが、高校生の時に少しずつボケ始めて、1年ほど介護生活が続いて、家で亡くなった。

それまで、母と二人で介護生活をしていた祖母は、葬式で、

「10年は、迎えにこないでください」

 と祈っていた(笑)。

 そして、10年後、祖母は、死ぬ40日前まで元気で、ほとんど寝込まずに、家族全員に見守られてぽっくり亡くなった。

 それから、30年近い年月が流れた。

 まだぽっくり寺には行ってないけれど、なんとなくあのときの祖母の気持ちが理解できる年齢になった。

「迷惑かけずに死にたい」

「誰かに下の世話をしてもらいたくない」

 その気持ちが今はわかる。


(更新 2015/12/22 )


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プロフィール

大谷由里子(おおたに・ゆりこ)

 1963年奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業に入社。故・横山やすし氏のマネージャーを務め、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなどを売りだし注目を集める。2003年、研修会社の志縁塾を設立。「笑い」を取り入れた「人材育成研修」は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題となっている。 現在は、年間300を超える講演・研修をプロデュース中。主な著書に『仕事で大事なルールは吉本興業で学んだ』(こう書房)、『はじめて講師を頼まれたら読む本』(中経出版)など多数。

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