小学校の時に通っていた市立図書館の児童部屋にはわずかですがマンガも置いてありました。
 コミックスだと、なぜか『巨人の星』が全巻。
 雑誌は、『冒険王』『りぼん』『なかよし』が毎月購入されていました。
 貸し出しはできなかったので、館内で読むしかありませんでした。
 マンガに飢えていたので、少女マンガである『りぼん』も『なかよし』も毎月読んでいました。
『巨人の星』の記憶が鮮明なのはここで何度も何度も読み返したからですし、児童部屋に出入りできた中学三年生までは、『りぼん』も『なかよし』もしっかり読み込んでいました。
 当時の印象だと、『なかよし』は全体的に垢抜けない感じでした。絵柄も話も古くさいお涙頂戴のメロドラマが多くて、少なくとも男の僕が読んでもピンと来るマンガが少なかった。
 その点、『りぼん』のほうが面白かった。最初は、巴里夫という男性作家が連載していた『5年ひばり組』という作品が好きでした。わりとお行儀のいい学園ドラマだったのですが、それでもメロドラマよりは楽しめました。
 そのうち、もりたじゅん、一条ゆかり、弓月光などが登場し、一気に誌面に活気が出ました。
 弓月光のドタバタコメディーには男でも爆笑できたし、もりたじゅんの元気のいいヒロインも共感できた。
 一条ゆかりは、『デザイナー』という作品のインパクトが大きかった。読んだ時期は中学二、三年だったでしょうか
 デザイナーをめざす主人公の愛憎劇はそれまでの少女マンガの物語のイメージを超えるスケールで、そのストーリーテリングは洋画を観るようでした。絵も精緻で一級品のマンガだと感じました。
『なかよし』よりも『りぼん』の方が、はるかに垢抜けているように思え出したのも、この頃からです。

 集英社新書から出た『同期生』という本は、一条ゆかり、もりたじゅん、弓月光、三人の漫画家が語る半生です。
 文体から受けた印象ですが、それぞれにインタビューしたものを起こした本のように思えます。
 でも、だからこそ、それぞれの性格がすごく伝わってくる気がする。
 一条ゆかりが語る半生は、とにかくパワフル。幼い頃貧しかったことも、そのあとの仕事の仕方も、悩みも喜びも全部ひっくるめてパワフルに、少女マンガの女王の道を邁進しているように感じられました。
 マンガ業界に身を置いていた時に漏れ聞いた一条ゆかり像とも、ぶれることはない。
 この語りも一条マンガを読んでいるような気になりました。
 もりたじゅんの回想は、自身のこともありますが、途中から、結婚した本宮ひろ志のエピソードが多くなるのが面白かったです。
 もりたじゅんと結婚して、本宮マンガの女性達がグッと色っぽくなったのは、一読者であった僕もわかりました。本宮マンガの女性はもりたが描いているという噂は、中学生だった僕も耳にしたことがありました。『俺の空』なんかの成功は、もりたのアシストあってこそだと言われていました。
 その辺の分業のやり方が彼女側から聞けたことは、とても興味深かったです。
 弓月光はほんとにマンガを描くのが好きな、永遠のマンガ少年なんだなという感じでした。

 この三人が実は『りぼん』の第一回新人賞の入選者であることを、この本を読んで初めて知りました。
 そして、この三人が、自分たちの描きたい物を描くことで『りぼん』の誌面を変えたというのです。
 子供の頃、「垢抜けてるなあ」と思っていた誌面は、デビューして間もない10代後半から20代前半の新人作家達が作ったものだったのですね。
『少年ジャンプ』が新人作家を登用することでヒット作を作っていくことは有名ですが、その先鞭を『りぼん』がつけていたとは。
 どちらも出版しているのは集英社、やはり社風というのはあるのかもしれませんね。