<ライブレポート>SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨらの個性が爆発した【TALTOナイト 2023】
<ライブレポート>SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨらの個性が爆発した【TALTOナイト 2023】

 3月3日東京・Zepp Hanedaにて、音楽レーベル「TALTO」の所属バンドによるイベント【TALTOナイト 2023】が開催された。コロナ禍を経て2年ぶりに行われたこのイベントには、SAKANAMON、マカロニえんぴつ、ヤユヨ、WON、オープニング・アクトとしてSPRINGMANが出演した。個性溢れる出演アーティストで大いに盛り上がった当日の模様をレポートする。

<オープニング・アクト:SPRINGMAN>
 18時になると、UNICORN「スプリングマンのテーマ」を登場SEとして、オープニング・アクトを務める荒川大輔によるソロ・プロジェクトSPRINGMANがステージに上がる。ドラム、ベース、キーボードを従えてた4人編成で「さよなら北千住」で軽快に歌い出した。タイトなリズムの隙間を縫うように流れるオルガンの音が気持ち良い。間奏では「今日は声出しして良いみたいなんで……ダメだ、喋りながらじゃ弾けねえ」と笑わせつつ、ステージ前方に出てエモーショナルなギターソロで唸らせた。

 アップテンポなロックンロール「心境」を歌うと「はじめまして!SPRINGMANです。この度、TALTOより3か月連続のリリースが決まりました!」と告知して、その第1弾として3月29日にリリースされる新曲「カポック」を初披露。豪快なサウンドが爽快なミディアムチューンだった。「人一番、悩んで学んで、みなさんの生活に寄り添える音楽を届けられるように頑張ります」と、奥田民生の曲「悩んで学んで」を織り交ぜたMCで想いを伝えると、最後の曲「still writing…」へ。シリアスさを纏った楽曲で、それまでの曲とはニュアンスの違う柔らかい演奏に乗って、真摯な歌声を客席に届ける。短いながらも骨太な演奏とキャッチーなメロディで沸かせて、見事にオープニング・アクトの役目を果たした。

<WON>
 会場が暗転すると、ステージ前に吊るされた紗幕にシルエットが浮かび、エレキギターのイントロが流れ出す。「こんばんは、WONです!楽しんで行きましょう!」と、幕の向こうにうっすら見える姿が叫び、「ヘイトキラー」でライブが始まった。リズミカルな楽曲に合わせてWONが歌うと、曲にリンクしたアニメーションや歌詞がスクリーンいっぱいに映し出される。心電図が波打つ映像の中、WONが「みなさん、手拍子をお願いします!」と煽ると、会場いっぱいに大きな手拍子が広がった。そのまま曲を繋いで「ギャンラブ」へ。速いBPMで目まぐるしく展開していく歌と映像は、続く「裏目シアター」のさらに混沌としたトラックでオーディエンスをカオスに誘う。3曲を続けざまに披露した後は、ピアノの旋律とアコースティックギターの音色が美しいバラード「咲かない」へ。先ほどまでとガラッと雰囲気が変わりしっとりと歌い上げた。

 「改めまして、WONと申します。今回が“現地ライブ”初ということで、とっても緊張していたんですけど、想像の100億倍温かい会場で、もっとライブがやりたくなりました!」とMCで心境を明かす。キーボードとアコギでサポートを務めたHOWL BE QUIETの竹縄航太を紹介すると、「次でラストの曲にさせていただきたいと思っているんですけど……え~!(笑)」と、自らお客さんの惜しむ声を演出するユーモアたっぷりのMCも。最後はバラード曲「日記」で、泣き叫ぶようなシャウトを聴かせた。歌唱力の高さとミステリアスな存在感で、初めての現地ライブながら強烈なインパクトを残した。

<ヤユヨ>
 初恋の嵐「Untitled」がSEで流れる中、リコ(Vo,Gt)、ぺっぺ(Gt,Cho)、はな(Ba,Cho)、すーちゃん(Dr,Cho)からなる4ピースバンド・ヤユヨがステージに上がる。ぺっぺが弾くピアノのリズムに合わせてリコが歌い出して、「愛をつかまえて」からライブがスタートした。ペッペは間奏でギターソロを弾き歌中ではキーボードを弾く奮闘ぶり。「大阪から来ましたヤユヨです!【TALTOナイト】、まだまだこんなもんちゃいますよね!? 自由に楽しんでいきましょう!」とリコがハンドマイクで煽り、軽やかな演奏をバックに歌う「Yellow wave」に合わせて手拍子を送りながら体を揺らすオーディエンス。

 MCでは、「【TALTOナイト】2年ぶりの開催ということで、めちゃくちゃ待ち遠しかったです。来てくれてありがとうございます」と感謝を伝えて、「POOL」へ。ヒップホップ的なビートと歌いまわし、ゆらゆらとたゆたうキーボードの音色が対照的で、幻想的な中にも力強さを感じさせる1曲だった。三拍子のリズムに乗せて失恋を歌った「あばよ、」から、「今日は声出しOKなので、知ってても知らなくても歌ってください」と呼び掛けて始まった「さよなら前夜」では、リコがセンターで煽り、ぺっぺとはなはドラムのすーちゃんの前に集まって音を鳴らす。ベース、ギター、リコのハープとソロを回す場面も。最後は「futtou!!!!」で、バンドの楽しさを目いっぱい伝えたライブを終えた。

<マカロニえんぴつ>
 この日は1階席にも椅子が用意されていたが、マカロニえんぴつの出番では1階席、2階席共に総立ちとなった。おなじみのSE、ザ・ビートルズ「Hey Bulldog」が流れると手拍子で迎えられた、はっとり(Vo./Gt.)、高野賢也(Ba./Cho.)、田辺由明(Gt./Cho.)、長谷川大喜(Key./Cho.)の4人。清涼感たっぷりなキーボードのイントロから始まる「レモンパイ」で冒頭から明るく華やかにスタートすると、続く「洗濯機と君とラヂオ」では、サビを前に「羽田ー!準備はいいですか!?」と煽るはっとり。イベントならではの、最初から猛スピードでダッシュしている感じのステージングだ。

 MCでは、はっとりが「知らぬ間に仲間がたくさん増えましたね。SPRINGMANってUNICORNのアルバム名から来てるでしょ? 2人いらないんだよね。芸風が近い!」と、はっとり自身のルーツでもあるUNICORNを巡る軋轢(?)を思わせる発言に客席から笑いが起こった。「【TALTOナイト】、仲間も増えて心機一転、リスタートみたいな感じです。それに相応しい曲をやりたいと思います」と、「PRAY.」を披露。ヘヴィなリズムで突き進むような怒涛のサウンドとパワフルな歌唱に圧倒された。対照的にTBS系ドラマ『100万回 言えばよかった』の主題歌「リンジュー・ラヴ」では、優しいメロディで会場を包み込む。

 はっとりはMCで「最近いろんなところでロックバンドをやっていることについて訊かれるんです。僕はこれが好きだから、やってるんです。面倒くさいんですよ、ロックバンドって。やれることが決まってるのにいろんなことをやろうとする。そうすると負荷がかかるんだけど、それでも掘っていくと、自分たちの個性にやっとぶつかるんです。10年やっていてそれを感じました」と、昨年の結成10周年を経た11年目のマカロニえんぴつを語り、「なんでもないよ、」で、ギュッと魅力が凝縮されたライブを締めくくった。

<SAKANAMON>
 【TALTOナイト 2023】のトリを務めるのは、昨年で結成15周年を迎えたSAKANAMON。メンバーの藤森元生(Vo,Gt) 森野光晴(Ba) 木村浩大(Dr)は、かつてTALTOに所属していた東京カランコロン「トーキョーダイブ」が大音量で流れる中でステージに上がった。「SAKANAMONです!よろしくお願いします!」との藤森の第一声から始まった曲は、「クダラナインサイド」だ。分厚いサウンドが場内に広がっていき頭上を飛び交うライトも興奮を煽る。続いて、疾走する「幼気な少女」に引っ張られるように、客席からも大きな手拍子が沸き起こった。

 昨年リリースされた7thフル・アルバム『HAKKOH』に収録された「1988」では、流麗なギターの単音フレーズがキラキラと響き、バックのスクリーンに映し出された海や魚、クラゲ等の映像とリンクする。静まり返って音を聴き映像を見つめるオーディエンス。SAKANAMONの世界観に没頭させられた時間だった。

 MCでは、TALTOの最年長バンドということで「長男坊として、最後まで盛り上げていきます!」と宣言して、「ミュージックプランクトン」に突入。エッジの効いたギターを中心としたキメの多い演奏によるバンドの一体感、メロディアスな旋律がオーディエンスを巻き込んでいく。さらに熱量が上がったのが、ゴリゴリなベースフレーズから始まった「ZITABATA」。RPG風の映像も相まって盛りあがり、藤森がギターの弦を切るほどの大熱演となった。藤森は、「SAKANAMONは結成15周年になります。TALTOも6年、我々も15年。ここまで続けてこられたのは、間違いなくみなさんのおかげなんですよ。本当にありがとうございます!そんなみなさんに感謝を込めて最後に1曲お届けします」と、ピンスポットに照らされてギターを鳴らしながら「ふれあい」を歌い出す。迫真の歌と演奏で、感動的なラストナンバーとなった。

 アンコールに応えてステージに戻った3人は、出演者それぞれのライブスケジュールを告知。最後にSAKANAMONの次のワンマンライブは5月12日、神奈川 新江ノ島水族館【えのすいフライデーナイト♪vol.12 えのすい×SAKANAMON】であることを告げる。「キャパはZeppに負けてないですからね。魚2万匹に観られながらやるんで(笑)」と、SAKANAMONならではのライブをアピールして拍手喝采。最後は「これからもTALTOをお願いします!」との言葉から激しくドライブする「ロックバンド」で叩きつけるように演奏して、爆発的な盛り上がりとなった。

 エンディングでは、全出演者がステージに登場。「TALTOナーイツ!」の合図で記念撮影を行い、2時間半のイベントは終了した。まったく異なる個性が集まったロックなレーベル「TALTO」。今後も音楽シーンにたくさんの話題を届けてくれるはずだ。

Text:岡本貴之
Photo:酒井ダイスケ

◎公演情報
【TALTOナイト 2023】
2023年3月3日(金)
東京・Zepp Haneda

<セットリスト>
SPRINGMAN (オープニング・アクト)
1. さよなら北千住
2. 心境
3. カポック
4. still writing…

WON
1. ヘイトキラー
2. ギャンラブ
3. 裏目シアター
4. 咲かない
5. 日記

ヤユヨ
1. 愛をつかまえて
2. Yellow wave
3. POOL
4. あばよ、
5. さよなら前夜
6. futtou!!!!

マカロニえんぴつ
1. レモンパイ
2. 洗濯機と君とラヂオ
3. PRAY.
4. リンジュー・ラヴ
5. 星が泳ぐ
6. なんでもないよ、

SAKANAMON
1. クダラナインサイド
2. 幼気な少女
3. 1988
4. ミュージックプランクトン
5. ZITABATA
6. ふれあい
EN1. ロックバンド