『ホール・オブ・フェイム 2.0』ポロ・G(Album Review)

2021/12/09 14:21

『ホール・オブ・フェイム 2.0』ポロ・G(Album Review)
『ホール・オブ・フェイム 2.0』ポロ・G(Album Review)


 2021年は、4月にリリースしたシングル「Rapstar」がソング・チャート“Hot 100”で自身初のNo.1デビューを飾り、6月に発表した3枚目のスタジオ・アルバム『ホール・オブ・フェイム』も、アルバム・チャート“Billboard 200”、R&B/ヒップホップ・チャート、ラップ・チャートの3冠を制す大活躍を遂げた、米イリノイ州シカゴ出身の若手ラッパー=ポロ・G。ミーゴスやマネーバッグ・ヨー、今年「Stay」で大ブレイクしたザ・キッド・ラロイの『ファック・ラヴ』など、人気ラッパーの作品にもゲスト出演し、知名度と人気を高めている。
 哀愁系トラップからアグレッシブなドリル・スタイルまで、難易度の高いトラックもそつなく熟し、攻撃的な面とメンタルヘルスを伺わせる軟弱さ、臭さを導き出す強烈なインパクト……と若者を中心に“信者”を獲得しているのも納得の、評価されて然るべき才能を持ち合わせている。本作は、才気が高まったタイミングでリリースされたその『ホール・オブ・フェイム』に14曲を追加したデラックス・エディションで、前月には1曲目を飾る「Bad Man (Smooth Criminal)」がリード曲としてリリースされた。
 「Bad Man (Smooth Criminal)」は、タイトルからも予想できるとおり故マイケル・ジャクソンの同名曲「Smooth Criminal」(1987年)を下敷きにした80年代直系のエレクトロ・ファンク。斬新なビート・アレンジや高速ラップは、「Smooth Criminal」のヒットと同時期に頭角を現したマントロニクスも彷彿させる。トラック&リリックはもちろん、白のセットアップでギャングと絡み合うミュージック・ビデオからも亡き“キング・オブ・ポップ”への敬意が伺える。
 スネアとビブラフォンをブレンドしたトラップ「Don't Play」は、リル・ベイビーとのコラボレーション。昨年リリースした出世作『マイ・ターン』の延長線ともいえる良曲だが、当のリル・ベイビーが“わずかな出演”ということに若干肩を落とすファンも、少なくはないだろう。一方、次の「Start Up Again」は、ゲストのマネーバッグ・ヨーが十分に映えるギャングスタ・ラップで、高低差ある両者の掛け合いがアクセントになっている。00年代の風味が漂う「Heating Up」も、YungLivとポロ・Gの声質が似ているが故相性良く、煽るスリリングなビートにもフィットした。
 リル・ティージェイが客演した「Suicide」や、米メンフィス出身のラッパー=NLE・チョッパーとのコラボ曲「Unapologetic」も悪くはないが、個人的には曲調と両者の声質がマッチしていないような気がしないでもなく、パフォーマンスにもうひと工夫欲しかった。特に、メンタルヘルスに直結したメロウの後者は、繊細さに欠ける。
 ゲストは不在だが、5曲目の「Black Man in America」は純粋なヒップホップらしい傑作で、ゲットーに住む貧困層の現状、ギャングライフや人種差別など黒人としての地位向上を訴えている。スラム街の現状を綴った哀愁系のエモ・ラップ「Young N Dumb」も、社会的・政治的なメッセージ性が強く、中心部に配置されたこの2曲は本作のハイライトといえる素晴らしさ。エモ・ラップといえば、故ジュース・ワールドを彷彿させるムーディーなスロウジャム「With You」や、アコースティック・ギターとピアノの繊細な音色が切ない「Decisions」も好曲。バックを支えるギターの演奏が心地良い、前向きなメッセージを添えた「Partin Ways」など、後編は恋愛絡みを中心としたメロディックなトラックが集中する。
 中でも、現代男子の(?)繊細な心の琴線に触れた「Piano G」は、芯のあるプロダクション・センスが活かされていて、タイトルの如く“ピアノを主体”として制作するポロ・Gらしい意義ある作品だった 。「Bad Man (Smooth Criminal)」に勝るインパクトはないが、エレキのイントロで静かに幕開けする、ロックにクロスオーバーしたミディアム「Fortnight」や、古典的で懐かしい雰囲気を感じられる「Alright」も、アルバム全体のアクセントとして印象付ける。
  本編『ホール・オブ・フェイム』比較すると、新作という意味では若干弱く、センセーショナルな感覚やオリジナリティには欠けるが、お蔵入りするには惜しい曲ばかりで、デラックス盤(続編)としての機能は十二分に果たしている。昨今の傾向からすると“ストリーミング対策”として再ヒットを狙うための戦略ともとれるが、前述のザ・キッド・ラロイのように、それが多くのリスナーに届くキッカケにもなるわけで、そういった意味では有益なリリースだったといえなくもない。「Bad Man (Smooth Criminal)」のように、何かを突き破れればさらに可能性も開けたと思うけど。
Text: 本家 一成

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