<コラム>傑作ラブソングを紡ぎ続けてきた“恋愛の神様”、古内東子の“今聴いておきたい”10曲
<コラム>傑作ラブソングを紡ぎ続けてきた“恋愛の神様”、古内東子の“今聴いておきたい”10曲

 “恋愛の神様”なんていう評価をされることも多い、シンガーソングライターの古内東子。その評価に違わず、デビューから28年間に渡って数々の傑作ラブソングを紡ぎ続けてきた。まもなく3/27(土)に横浜、4/1(木)に大阪、4/3(土)に東京と、3ヶ所のビルボードライブでドラムレスのアコースティック・ライヴの公演を控えている。ここではライヴ直前に知っておきたい、古内東子の代表的なディスコグラフィを、“今聴いておきたい”10曲とともに紹介していこう。

「はやくいそいで」(1993年)
東京出身の古内東子は、両親の影響で幼少期からピアノを学び、音楽の素養を身に着けていった。上智大学在学中には姉と二人で楽曲制作を行い、デモテープをソニー・ミュージックに持ち込んだことがきっかけとなり、メジャー・デビューを実現した。記念すべきデビュー・シングル「はやくいそいで」は、ファースト・アルバム『SLOW DOWN』の先行シングルとして発表。はつらつとしたサウンドに乗せた初々しさを感じさせるポップな一曲だが、恋愛の機微を描いた歌詞からは、すでに彼女の世界観が確立されていることがよく分かる。

「うそつき」(1994年)
デビューから早いペースでシングルとアルバムのリリースが続いたが、この曲は4作目のシングルとして発表され、サード・アルバム『Hug』(1994年)の先行シングルとなった初期の人気曲。元オリジナル・ラヴの木原龍太郎が手掛けたスタイリスティックスからインスパイアされたスウィートなアレンジが限りなく美しいバラード・ナンバー。失恋した女性の切ない気持ちをストレートに表した歌詞は、まさに恋愛ソングのお手本ともいえる内容で、その後の彼女の十八番となるシチュエーションのひとつだ。

「誰より好きなのに」(1996年)
古内東子の代表曲をひとつ挙げるとしたなら、やはりこの曲だろう。7枚目のシングルとしてリリースされ、ドラマ『俺たちに気をつけろ。』の挿入歌に使用されたことがきっかけでヒット。5作目のアルバム『Hourglass』(1996年)にも収録され、彼女のブレイクのきっかけとなった一曲でもある。ピアノのイントロから始まるメロウな世界観のミディアム・バラードは、小松秀行のアレンジも絶品であると同時に“やさしくされると切なくなる 冷たくされると泣きたくなる”というサビのフレーズが印象的。実らない恋でありながら一途な女性を描くことで、多くの共感を得た。

「大丈夫」(1997年)
この曲も彼女の代表曲のひとつと言ってもいいだろう。カッティング・ギターやストリングスを施したアレンジが印象的なグルーヴ感のあるナンバーで、すっかり名タッグとなった小松秀行がアレンジを手掛けた。役所広司主演のテレビドラマ『オトナの男』の主題歌という大型タイアップもあり、スマッシュ・ヒットとなり、その後リリースされた6作目のアルバム『恋』(1997年)もアルバム・チャートで2位という記録を残した。“大丈夫”と自分に言い聞かせる女性の可愛らしさを表現した歌詞も見事だ。

「銀座」(1998年)
多くの人々が行き交う冬の銀座を舞台に、過去の恋愛を振り返るというシチュエーションのミディアム・バラード。ポール・ジャクソン・ジュニアやエイブラハム・ラボリエルといった海外勢を起用し、ファルセットやコーラスを駆使したポップながらもソウルフルな一曲で、こちらもファンには人気が高い。この曲を含む7枚目のアルバム『魔法の手』は、アルバム・チャートで初の1位を獲得。人気クイズ番組『世界・ふしぎ発見!』のエンディング・テーマにも起用され、お茶の間にも彼女の名前は一気に広まった。

「My brand new day」(2000年)
好きな人には他に愛する人がいるという、不倫を想像させる歌詞が意味深なメロウなバラード。ゆったりとしたビートと美しいメロディ、ストリングスを配したゴージャスなアレンジと、彼女のアダルト・コンテンポラリー的なテイストが全面に出た一曲といえる。9作目のアルバム『Dark ocean』(2000年)に収録されており、アルバムも含めて音楽的に非常に成熟した大人の作品という印象が残る。アコースティックでじっくりと聴きたい一曲だ。

「Beautiful Days」(2005年)
古内東子は2003年にデビュー以来在籍していたソニー・ミュージックを離れ、ポニー・キャニオンに移籍。「Beautiful Days」は通算24枚目のシングルであり、CMソングに使用されたことでスマッシュ・ヒットを記録した。“大事なものがどんどん増えていく”という歌い出しから分かる通り、彼女のヒット曲には珍しく前向きな恋愛ソングとなっており、ライヴでもおなじみの一曲。アルバム『CASHMERE MUSIC』(2005年)の先行シングルであるが、エイベックスのティアブリッジに移籍後リリースしたアルバム『IN LOVE AGAIN』(2008年)にもNew Versionが収録されている。

「スロウビート」(2010年)
KICK THE CAN CREWのKREVAをフィーチャーし、意外なコラボレーションと、あまり想像していなかったヒップホップに肉薄したことで大いに話題となった一曲。流麗なストリングスとプログラミングされたビートの融合がユニークなアレンジとなっており、歌とラップが絶妙にシンクロすることで独特の世界観を作り上げている。R&Bのトレンドを上手く取り入れた14作目のアルバム『PURPLE』(2010年)収録曲。

「透明」(2011年)
恋愛を色に例えるのは彼女の得意な手法のひとつだが、“透明なら会いにゆけるのに 透明なら寂しい時わかるから”というフレーズで新境地を開いたと言える歌詞が耳に残る一曲。ピアノとプログラミングの絶妙に融合したサウンドも新鮮だ。シングルとしてはリリースされていないが、同名タイトルのアルバム『透明』(2011年)のオープニングを飾っている。本作では彼女は全編のアレンジを手掛けており、ミニマムかつ斬新なプロダクツはひとつの分岐点となった。

「Enough is Enough」(2018年)
現時点での最新作であり、さらにオリジナル・アルバムとしては6年ぶりとなった18枚目のアルバム『After The Rain』(2018年)。本作のオープニングを飾るのが、「Enough is Enough」だ。流線形のクニモンド瀧口が編曲を手掛け、古内流ネオ・シティポップともいえる爽快な一曲となった。スティールパンなども聴こえるメロウなアレンジはもちろんのこと、東京の街を舞台にしたアーバンな雰囲気のラブソングに仕上がっている。以前のようなヒリヒリした感覚ではない、大人の余裕を感じさせる名曲だ。

 今回のツアー“Toko's Songs Blooming”でここに挙げた10曲が披露されるかどうかは当日のお楽しみだが、彼女の代表曲ばかりなのでいくつかはきっと聴けることだろう。レコーディングされた上質なサウンドと、ライヴならではのアコースティックなテイストを比較しながら、古内東子の今の世界観をじっくりと味わっていただきたい。

TEXT : 栗本 斉

◎公演情報
【古内東子
"Toko’s Songs Blooming”】
ビルボードライブ横浜
3/27(土)(1日2回公演)
1stステージ 開場14:00 開演15:00
2ndステージ 開場17:00 開演18:00

ビルボードライブ大阪
4/1(木)(1日2回公演)
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30

ビルボードライブ東京
4/3(土)(1日2回公演)
1stステージ 開場14:00 開演15:00
2ndステージ 開場17:00 開演18:00

http://www.billboard-live.com/