CDは要or不要?! 年間ランキングに見るチャートの行方
CDは要or不要?! 年間ランキングに見るチャートの行方

 去る12月4日にビルボード2020年年間ランキングが発表された。年間HOT 100にはYOASOBI「夜に駆ける」、年間HOT Albumsに米津玄師『STRAY SHEEP』、年間TOP ArtistsがOfficiai髭男dismという結果となった。なかでもHOT 100を制したYOASOBIは、この1年の音楽シーンを知るには欠かせない象徴的なアーティストであり、「夜に駆ける」は今後のチャートを占う上でも重要な一曲ではないだろうか。

 彼らは小説を音楽化するというプロジェクトから始まったユニットだ。ボカロPのAyaseとシンガーソングライターのikuraによって結成され、2019年10月にデビューし、そのデビュー曲「夜に駆ける」がいきなりブレイク。YouTubeや音楽ストリーミングサービスを中心に再生数を伸ばし、TikTokやメディア露出などが絶妙に連動して爆発的なヒットとなったのは周知の通りだ。このヒットにいたるプロセスやスピード感、そしていったんヒットした後のロングラン具合は、まさに今の時代ならではだ。

 これまでの大ヒットの図式といえば、CDの売上が中心となっており、配信やその他はサブ的な要素であることが多かった。ジャニーズ系やベテランアーティストなどでストリーミングや動画配信を行わないアーティストも多く、以前はそういうスタンスでも年間ランキングの上位の常連となっていたが、今年は昨年以上に苦戦を強いられている。ランキング上位のほとんどがストリーミングや動画再生数など、CD売上以外のなにかに特化したことで他の要素が追随していくというパターンだ。すでに随分前から言われていることだが、CDの売上を中心としたヒットは消えていき、フィジカルのリリースがないことがデフォルトになりつつあるのだ。その筆頭格の楽曲が「「夜に駆ける」といえるだろう。

 とはいえ、一概にフィジカルが不要とは言い難い。まだまだCDのシェアは大きいし、LiSA「紅蓮華」のようにCDの売上数が大きくチャートに加算されている大ヒットもある。ファンの動向を見つつ、そのあたりの力加減をどう戦略的にチャートへ反映させていくのかは、アーティスト及びスタッフの手腕に掛かっているのだ。Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。