<コラム>ポップでありながら、深みを増していく、ベリンダ・カーライルの歌声
<コラム>ポップでありながら、深みを増していく、ベリンダ・カーライルの歌声

思い出を彩るヒット曲の数々

 1981年。P.I.L の『フラワーズ・オブ・ロマンス』、ジャパンの『錻力の太鼓』、トム・トム・クラブの『おしゃべり魔女』、ストーンズの『刺青の男』などを夢中で聴いていた年に、僕(たち)はそのバンドと出会った。アメリカの女性5人組、ゴーゴーズ。「ウィ・ガット・ザ・ビート」が最高だった。パンクの影響下で結成されたバンドである故、ビートの速さやギターの切り込み方や投げやりな歌い方はまさにパンクだったが、暗さは皆無で、明るくポップだった。その曲は大ヒットして、デビュー盤『ビューティー・アンド・ザ・ビート』は女性バンドによる自作自演作として初の全米1位に輝いた。あれからあと1~2年で40年になる。

 そのゴーゴーズのヴォーカリストを経て、ベリンダ・カーライルは1986年にソロでデビューした。デビュー曲「マッド・アバウト・ユー」は同年に3作目のアルバム(『トゥルー・ブルー』)を出したマドンナにも近いアプローチでいきなり全米3位を記録。そして1987年の「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」が全米1位、1988年の「アイ・ゲット・ウィーク」が全米2位に輝き、90年代に入ってからも続々とヒットを放っていった。そんな数多くのヒット曲のなかでも、やはり「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」は特別な1曲。日本でもいくつかのCM や情報番組のテーマ曲として使われ、これを聴けば当時の自分や好きだった相手を思い出すというひとはたくさんいるはずだ。あれからもう30年ちょっと。でも歌は古びない。

「ポップさ」と「深み」を再確認

 “パンチがある” なんて言い方をしてもいい歌い方だったゴーゴーズ時代。溌剌としていながらそれだけじゃない表現の幅をつけていったソロの初期~中期を経て、母親になってからはたおやかさが増し、声の質も少しずつ変化していった。豊かなバラードも多く歌うようになった。その一方で何度かゴーゴーズを再結成し、バンド表現を楽しんでもいた。

 90年代後半から2000年代半ばまで活動ペースが落ちた時期もあったが、2007年には全編フランス語で歌ったアルバムで復帰。最新作は約2年前に発表した『Wilder Shores』で、タブラ、シタールなどを用いたエキゾチックなサウンドに乗せて自身の魂のありかや経てきた心の旅についてを歌っている。当然それは20~30年前のポップス表現とは異なる種類のものだが、しかし最後まで聴いてハッとさせられる。深みあるいまの声で歌われるのだ、「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」がアコースティックのバラードで。

 ゴーゴーズのデビューからもうすぐ40年。ベリンダは歌い続け、そしてまた[ビルボードライブ]のステージに立つ。成熟した歌声と色あせない名曲のよさを、その耳でいまこそ確認していただきたい。

Text:内本順一

◎公演情報
【ベリンダ・カーライル】
<ビルボードライブ大阪>
2020年1月15日(水)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30

<ビルボードライブ東京>
2020年1月17日(金)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30

2020年1月18日(土)
1stステージ開場15:30/開演16:30
2ndステージ開場18:30/開演19:30