2017年のクラシック・リリースを振り返る、インディペンデントが再評価進む
2017年のクラシック・リリースを振り返る、インディペンデントが再評価進む

 Spotifyが日本に上陸して1年、AppleMusicもローンチして2年、聴けるアルバムが日増しに増える一方で、CDを遥かに超える音質のハイレゾ配信の人気もじわじわと高まっており、時代は確実にフィジカル・ディスクから配信へとシフトしている感がますます募る。

 インディペンデントが再評価進む、あるいは近現代の作曲家たちの作品などの演奏を陸続とリリースされているのに対し、メジャー・レーベルはやや押され気味、という構図はそのままだし、セッションよりライヴ録音が数で圧倒しているという趨勢にも大きな変化はなかった。ここでは、そんな2017年のリリースを駆け足で振り返る。

 今年もアニヴァーサリー作曲家にまつわるリリースは活況を呈した。生誕450年のモンテヴェルディでは、ガリードの再発ボックス(Accent)やマレットの『聖母マリアの夕べの祈り』(Grossa)。テレマンは、「没後250年テレマン傑作の森名盤撰」シリーズ(SONY)。生誕150年のケクランは、管弦楽と室内楽にピアノのボックス2つ(SWR classic)。没後80年のラヴェルではフランソワ=クザヴィエ・ロトの『ダフニスとクロエ」(hmf)にスティーヴン・オズボーンのピアノ協奏曲集(Hyperion)。これも没後80年となったシマノフスキではリュカ・ドゥバルグのピアノソナタ第2番(SONY)、没後60年のシベリウスではアンスネスのピアノ作品集(SONY)等々が記憶に残った。

 アニヴァーサリー以外の作曲家だと、メンデルスゾーンでガーディナーのシリーズ第4弾『真夏の夜の夢』(LSO Live)とネゼ=セガンによる交響曲全集(DG)、ドヴォルザークでは、5月に惜しまれつつ天に召されたビエロフラーヴェクの『スターバト・マーテル』(Decca)、トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集(hmf)、パヴェル・ハースQらによるピアノ五重奏と弦楽五重奏曲(Supraphon)がそれぞれ際立っていた。

 他にオケものではクルレンツィスのチャイコフスキー『悲愴』が大きな話題となった。ピアノではヴォロドス(SONY)とフレイレ(Decca)のブラームスやダナ・チョカルリエのシューマン独奏曲全集(La Dolce Volta)が出色。グールドの歴史的名盤、1955年『ゴルトベルク変奏曲』の全テイクを収録した超マニアックなアイテムにも驚かされた(SONY)。室内楽ではモディリアーニQのシューマンの弦楽四重奏曲集(Mirare)、チェンバロではジャン・ロンドーのJ.S.バッハとその息子達のチェンバロ協奏曲集(Erato)も鮮やかな演奏だった。

 ヴァイオリンでは、フランク・ペーター・ツィマーマンのショスタコーヴィチ(BIS)、ここでも紹介したテツラフによるバッハ無伴奏(Ondine)、ルノー・カプソンによるリーム、デュサパンにマントヴァーニの協奏曲集(Erato)あたりだろうか。現代曲では、ステファヌ・ドネーヴによるギヨーム・コネソン作品集(DG)や、ケント・ナガノ指揮の細川俊夫のオペラ『海、静かな海』(EUROARTS)も印象深い。

 声楽では、ドゥヴィエルのフランス歌曲集(Erato)等に加え、声楽のみではないし純クラシックでもないのだだが、没後20周年を迎えたシャンソン歌手、バルバラの曲をピアニストのアレクサンドル・タローが編曲したコンピレーション・アルバム(Erato)が清冽だった。

 来年のアニヴァーサリーにも、生誕350年のクープラン、没後150年のロッシーニ、没後100年のドビュッシー、生誕100年のバーンスタインなど大物がひしめいている。来年もまた、財布とにらめっこをすることになりそうだ。Text:川田朔也