フランク・オーシャンの拘りが十分に感じられる、後世に残る名盤『ブロンド』(Album Review)
フランク・オーシャンの拘りが十分に感じられる、後世に残る名盤『ブロンド』(Album Review)

 長い間延期されていた、R&Bシンガー、フランク・オーシャンの新作『ブロンド』が、ようやく2016年8月20日にリリースされた。その数日前には、“ヴィジュアル・アルバム”としてトータルタイム45分、全18曲で構成された『エンドレス』がアップル・ミュージック限定で配信され、話題となったばかりだ。

 ヴィジュアル・アルバム『エンドレス』に続き、アップル・ミュージック限定で配信されたフランク・オーシャンの2ndアルバム『ブロンド』は、自身を中心に、アレッシア・カーラやジョン・レジェンド等を手掛けたマレー、ラッパーのカニエ・ウェストや、カニエのほぼすべてのアルバムに参加しているマイク・ディーンなど、いわゆる売れ線ではなく、音楽性を重視したプロデューサーが揃っている。

 「ピンク+ホワイト」にはファレル・ウィリアムズとタイラー・ザ・クリエイターが、「スカイライン・トゥ」には【グラミー賞】受賞シンガーのケンドリック・ラマーが、そして「ソロ」には、アウトキャストのアンドレ・3000がクレジットされていて、ゲスト陣も豪華。

 さらに、「クロース・トゥ・ユー」にはスティーヴィー・ワンダーの「クロース・トゥ・ユー」、「ホワイト・フェラーリ」にはザ・ビートルズの「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」が、「ジークフリード」には、エリオット・スミスの「フォンド・フェアウェル」がサンプリングされていて、レジェンドたちへの敬意も伺える作品に仕上がっている。

 内容、サウンド共にズッシリ重たく、ポップな要素は皆無といったアルバムだが、作り手の拘りが十分に感じられる、後世に残る名盤だ。言葉が通じずとも、フランク・オーシャンの伝えたいことが、音を通して伝わってくる、そんなアルバム。すばらしい。

Text:本家一成