【ボナルー・フェスティバル】パール・ジャム/マックルモア&ライアン・ルイス/カマシ・ワシントンが出演した3日目のレポート&写真が到着
【ボナルー・フェスティバル】パール・ジャム/マックルモア&ライアン・ルイス/カマシ・ワシントンが出演した3日目のレポート&写真が到着

 米テネシー州マンチェスターにて2016年6月9日~12日の計4日間に渡り開催され、約9万人を動員した今年で15回目の【ボナルー・フェスティバル】。【コーチェラ】、【ロラパルーザ】と並び世界的に知られるアメリカのフェスで、700エーカー近くある巨大農場が会場となっており、観客の8割がキャンプを行う。今回は、8年ぶりにボナルーにカムバックし、嵐を止めたパール・ジャム、チャンス・ザ・ラッパーが飛び入りしたマックルモア&ライアン・ルイス、カマシ・ワシントンが豪華ゲスト陣ととも会場を盛り上げたスーパージャムなど3日目のレポートと写真をお届けする。

◎Natalie Prass / ナタリー・プラス
去年デビューし、US&UKの数々の媒体から高評価を得たシンガーソングライター。デビュー前はジェニー・ルイスのバンドメンバーとしてツアーしており、美しいビジュアルに、ヴィンテージのミニドレス、ヘップバーンのようなサングラス、そして華奢の体には大きく見えるエピフォンのギター“カジノ”を可憐に弾く姿、小鳥のさえずりのように優しく透き通る声すべてが、暑いテント内をヨーロッパの避暑地で観ているような気にさせる。サイモン&ガーファンクルの「The Sound of Silence」に アニタ・ベイカー「Caught Up In The Rapture」をカバー。「この後、しばらくツアーはお休みよ。そして新作を作るの。楽しみにしていてね」と新曲をファンにプレゼントしてくれた。自作での来日に期待したい。

◎The Internet / ジ・インターネット
『エゴ・デス』リリース後世界中をツアーで周り、ベースメント・ジャックスなどのオープニング・アクトなども務め着実にキャリアアップした彼ら。官能的な甘い声を持つシンガーのシド。群衆の狂気とも取れる熱狂的な感性を自身のエネルギーに変え、ステージを盛り上げた。ステージ袖には彼らのレーベル <オッド・フューチャー>のタイラー・ザ・クリエイターやチャンス・ザ・ラッパー、ファレル・ウィリアムスもライブを楽しんでいた。

◎Beach Fossils / ビーチ・フォッシルズ
午後の早い時間、気だるい雰囲気が漂う場所にローファイでシュールは曲の彼らはぴったりだ。ステージ上でフロントマンが戯れ楽しむ様子から次第に観客もつられて踊り出す。スローな曲とアップテンポと構成をうまく生かす様子は観客がどうやれば楽しめるか熟知しているようであった。出演者と観客が同調するステージがそこにあった。

◎Two Door Cinema Club / トゥー・ドア・シネマ・クラブ
彼らはまさにライブ・バンドである。メンバーがお互いに本当に楽しむようなバンドであり、それが観客にも伝わり何度でも楽しみたくなる。彼らが出演した<WHICH STAGE>は人で溢れかえる、次に出演するのはメイン・ステージの夕暮れだと確信した。

◎Oh Wonder / オー・ワンダー
Soundcloudで注目され人気が出たロンドンのエレクトロ・ポップ・デュオ。ステージの背景にはLEDライトの“OW”の文字が。二人が登場し、ヒット曲「Lose It」や「Without You」などを演奏。まるで熱いトーストの上に溶け出したバターのように感じるほど息の合ったデュオである

◎Macklemore & Ryan Lewis / マックルモア&ライアン・ルイス
チルアウトな雰囲気のボナルーだが、そこに刺激も必要である。そんな時にピッタリなのが彼らだ。ボナルー信者もパーティーを待っていた!DJのライアンがターンテーブルに手をかけ、マックルモアがステージに出てきて娘が生まれたことへの感謝と父親になった喜びを語ってショウはスタート。ステージ上にはラックにかけられた洋服が並び、マックルモアが毛皮のコートを羽織り、彼らのビッグヒット「Thrift Shop」で盛り上がりは最高潮になったのだが、それだけでは終わらない。サプライズ・ゲストとして、チャンス・ザ・ラッパーが彼らのステージに登場しコラボソングの「Need to Know」を熱唱した。

◎The Claypool Lennon Delirium / ザ・クレイプール・レノン・デリリウム
プライマスのベーシストであるレス・クレイプールとショーン・レノンの新ユニット。以前一緒にツアーをした際、ショーンの音楽的才能にレスが惚れ込んで今回のユニットが結成。ボナルーファンにとって、プライマスもパール・ジャム同様伝説的バンドである。そのレスが才能を賞賛しているショーンも彼と同じくらい強力なカリスマ性とギターテクニックでその場にいる観客を圧倒した。彼らがザ・ビートルズの「Tomorrow Never Knows」をプレイした時の観客の感動はその場にいなくとも想像できるだろう。実はショウスタートの30分間ほど前から雲行きが怪しくなり空には稲光が。主催側が観客の安全を考慮して全てのステージを中断し、こちらのステージと別ステージのエリー・ゴールディングも天候の回復待ちをしなければならないというアクシデントに見舞われたが、幸運にも雨は降らずショウは1時間遅れで全てのステージが予定を繰り越して再開した。

◎Pearl Jam / パール・ジャム
観客の9割がパール・ジャム目当てで、この地に来ていたと言っても過言ではない。誰もがこの一夜がスペシャルになるものだと確信している。嵐の影響で1時間押したことも相まって、観客の“パール・ジャム・コール”が鳴り止まない。スタート前から泣きはらしてるファンもいるほど。そしてメンバー登場。エディはワインボトル片手に現れた。「Alive」、「Betterman」「Evenflow」などのメガヒットで観客は大合唱。シアトルのグランジ・ムーブメントから20年間走り抜け、ピークは今であるとも取れるパフォーマンス。

持ち時間の2時間を超えるステージ。エディが曲の間にオーランドの銃乱射事件やドナルド・トランプに対する不信感など、政治について唱える場面もあった。彼は群衆に尊敬されていることを当然知っている。彼らの手本となり自分の影響力で若者をどう良い方向に導くかを自身に課せられた使命だということも理解している。群衆はエディの思いを受け止める。ピンク・フロイドの「Comfortably Numb」やニール・ヤングの「Rockin' in the Free World」をカバー。これらの曲の歌詞から理解るように、どんなに悲惨な状況になろうとも、差別や政治的支配下に置かれても立ち向かっていく勇気をパール・ジャムはステージで教えてくれる。音楽と政治的要素が相重なった瞬間を目の当たりにした。彼らのロック・バンドとしての有能さを見せつけられた完璧なショウであった。

◎Kamasi Washington Superjam / カマシ・ワシントン スーパージャム
ボナルーのスーパージャムは毎年伝説になる。一貫して予測不可能なステージに誰もがわくわくせずにいられない。今年そんな伝説的ステージを任されたのが、カマシ・ワシントン!パール・ジャムの余韻覚めやらぬ中、スーパージャムが開演。今年のスーパージャムはテーマを持っていた。それは“Heart, Soul & Spirit: A Tribute to Tennessee.(ハート、魂&精神 : テネシーへの賛辞)”なるもの。

最初に登場したのは元デスティニーズ・チャイルドのミシェル・ウィリアムズ。アース・ウインド&ファイア (リーダーのモーリス・ホワイトはテネシー州出身で今年2月死去) の「Getaway」をカバーし、スーパージャムがスタート。サード・アイ・ブラインドのスティーブンは、ジョニー・キャッシュ(2003年にテネシーで死去)の「Ring of Fire」、アレン・ストーンはBBキング(テネシー州メンフィスが生んだブルースの巨匠)の「The Thrill is Gone」、ミゲル、ジャスティン・ティンバーレイク(テネシー州メンフィス出身)の「Sexy Back」をカバーし会場を盛り上げた。その他チカーノ・バットマン、 ナサニエル・ラトリフ、オー・ワンダー、リゾなども出演した。バックバンドにはジ・インターネットの17歳のキーボードプレイヤーも参加。

カマシの類稀な、スケール感のあるサックス。バンドとのフリージャズ・フュージョンの素晴らしさは言わずもがな、それにゲスト陣がさし色を加え、最強のハイエナジー・ファンク・ショウとなった。フジロックではカマシの本来のパワフルでソウルフルなステージが堪能できるであろう。待ち遠しい!

Photo & Text: ERINA UEMURA