中田裕二 涙のツアー最終公演@中野サンプラザ「落ち着いたら(地元)熊本でライブをやりたい」
中田裕二 涙のツアー最終公演@中野サンプラザ「落ち着いたら(地元)熊本でライブをやりたい」

 中田裕二5作目のアルバム『LIBERTY』、そのリリースを受けての全国ツアー【TOUR 16“LIBERTY”」の最終公演が、4月17日に中野サンプラザにて行われた。

中田裕二 その他ライブ写真

 中田が中野サンプラザのステージに立つのは5年ぶりのことだ。前回は、自身が率いていたロックバンド・椿屋四重奏のとき。椿屋時代からのファンにとっては、そんな過去もよぎるステージだったかもしれない。

 ライブは、アルバム『LIBERTY』収録曲から「WOMAN」「リボルバー」を立て続けに披露してスタート。華やかで賑やか、しかしそこに大人の余裕というものを絶えず感じさせるポップスに魅了される。日本ならでは、自分ならではのAOR(Audio Oriented Rock)というものを突き詰めてきた中田裕二というミュージシャンの魅力と、『LIBERTY』というアルバムの魅力を冒頭から存分に味わえ、この日のライブが文句なしの素晴らしい一夜になることを冒頭から確信させられた。

 2曲目を終えて中田は観客に語りかけた。「地元(本)が大変なことになっています。みなさんも心配されているかと思いますが、でも、お願いがあります。暗い顔をしないでください。目いっぱい楽しんで、終わった後たっぷり募金をしてください」。ほっとしたかのような笑い声が拍手とともに起きるほど、大人のMCだった。

 今ライブでは、アルバム『LIBERTY』収録の全曲を披露。中田が愛してやまない80年代から90年代初頭のポップスを、現在の自分、2010年代の東京に生きる大人としてのリアルな気持ちを込めて鳴らすことは、中田にとっての「シティ・ポップ」だった。『LIBERTY』はその「ポップ」性が突き詰められたものだ。そして今、当時を知る大人には懐かしいものとして、同世代にはリアルな音楽、若者たちには新鮮なものとして響いている。

 また、ライブでは椿屋四重奏のセルフカバー曲も披露された。「以前このステージで披露したはず。キャリアでも1、2位を争うバラード」という紹介とともに異形の歌謡レゲエとも言うべき曲「NIGHTLIFE」で会場をさらに盛り上げていった。『LIBERTY』というアルバムの世界を中心に、あくまで大人のエンターテイナーとしてステージをまっとうする、そんなライブ本編だった。

 アンコールなると打って変わり、中田はステージに登場するなり、それまで抑えていた気持ちを涙とともに溢れさせた。先ほどまでのエンターテイナーは、まったくもって上手く気持ちを伝えれない。自分自身に「情けない」を繰り返し、故郷への愛を語る。そして「落ち着いたら熊本でライブをやりたい、みんなも熊本に行ってみてほしい」と伝えて披露した「ひかりのまち」。椿屋四重奏の結成地である仙台への思いをこめて、2011年3月に発表した楽曲だ。この曲をまたしてもこんな気持ちで弾くことになるとは、というのが本心だったかもしれない。しかし、悲しみにどこまでも寄り添う気持ちをこうして曲にした以上、そこに悲しみがあるのならば歌い続けなければいけないという決然さが、シンプルな弾き語りに滲む感動的な光景だった。

 続いて、最新シングル楽曲「ただひとつの太陽」。1950-60年代のスタンダードやヴィンテージ・ソウルのテイストを活かしたごくシンプルなラブソングであり、中田の新たなモードを力強く告げている。同時に、中田裕二というアーティスト性である“変化を恐れず、未来へ向かって力強く”が、多くの人々へ向けた力強いメッセージであることも伝わってきた。

Text by 柳憲一郎
Photo by 河本悠貴


◎【中田裕二 TOUR 16 “LIBERTY”】最終公演
2016.4.17(日)中野サンプラザホール
01. WOMAN
02. リボルバー
03. KILL YOUR SMILE
04. en nui 
05. SO SO GOOD
06. 誘惑 
07. とまどい 
08. 春雷 
09. MUSK
10. 朝焼けの彼方に
11. ヴィーナス
12. ROUNDABOUT 
13. NIGHTLIFE 
14. UNDO 
15. LOVERS SECRET 
16. 月の恋人たち
17. STONEFLOWER
En1 ひかりのまち
En2. ただひとつの太陽 
En3. 夜をこえろ  
En4. MIDNIGHT FLYER 

<TOURメンバー>
奥野真哉(key;ソウル・フラワー・ユニオン)
朝倉真司(per)
平泉光司(g;COUCH, benzo)
小松シゲル(dr;NONA REEVES)
隅倉弘至(b;初恋の嵐)