動物を撮影する際には、その動物らしい動きやしぐさを捉えることを私は目指しています。そのためには観察が必要です。ただし、研究者とは違って特に記録することもなく、カメラを構えながら、時には、カメラを地べたに置いて動物たちを見ているだけです。

 観察のポイントは、動物たちが行動する範囲の確認です。実際に歩いているならば、その様子を見ます。どこを通って、どこで曲がるのか。それは何のために行っている行動なのか、を相手の立場になって考えてみます。姿が見えない時は、けもの道ともいうべき足跡を確認します。これはカメラを構える位置を撮影の前に決めるためです。

 さらに、今回は、ガラスの写り込みが少ない場所を探す必要があります。ただし、写り込みが無いと思った所でも、自分だけでなく、周りの人の服装もガラスに写り込むので、来園者が大勢いる時や移動している時は、状況が刻々と変わっていくことも忘れてはいけません。タスマニアデビルがやって来て、ファインダーで捉えたと思ったら、ちょうど、赤や白い服の人も歩いて来て、画面に写り込むことが何度もありました。私の姿もほかの人の目やカメラには写り込んでいるのですから、これは、お互いさま。「運も実力のうち」と開き直るしかありません。

 動物を撮影するには、それなりの時間が必要です。野生動物の撮影に行くと、撮影出来ないことが往々にしてあります。動物園の動物は、一日その場に居るだけで何回も撮影のチャンスがやってきます。今日、撮影できなくても、また行けばいいのです。自分の住んでいる近くの動物園へ気軽に通って撮影できます。それでも、野生動物と動物園の動物の撮影は基本的にあまり変わりません。野生では、距離や手前の木や岩が障害になるかもしれません。動物園では、ガラスや柵、さらに画面には入れたくない背景があるなど、どちらも、「条件の中で」撮影するのは同じです。

 アマチュア写真家の最大のメリットは、時間的にも金銭的にも制約が緩やかで、妥協の必要がないことです。自分で満足する写真が撮れるまで、時間をかけてすてきな動物たちの瞬間を捉えることが出来るのは、プロよりもアマチュアだと私は思っています。(写真・文/さとうあきら)

さとうあきら
動物・写真家。写真を見たみなさんが、「動物園や水族館で暮らしているすてきな動物たちに直接、会いに行ってほしい!」という願いを込めて撮影しています。
著書に『動物園の動物』(山と渓谷社)、『みんなのかお』、『こんにちはどうぶつたち』(福音館書店)、『おしり』『どうぶつうんどうかい』(アリス館)ほか多数。季刊『サイエンスウィンドウ』(科学技術振興機構)で、「動物たちのないしょの話」も連載中