(C)Ryuichi Ishikawa
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(C)Kotori Kawashima
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 先に発表になったように第40回(2014年度)「木村伊兵衛写真賞」(主催・朝日新聞社、朝日新聞出版)の受賞者は石川竜一と川島小鳥に決定した。その受賞作品展が、東京・新宿のコニカミノルタプラザで4月11日から20日まで開催される。本賞は、故・木村伊兵衛氏の業績を記念して1975年に創設され、各年にすぐれた作品を発表した新人写真家を対象とした賞だ。
 展示作品は、石川竜一の「絶景のポリフォニー」「okinawan portraits 2010-2012」と川島小鳥の「明星」。
 川島は、台湾の町並みや空気感をとらえながら、少年少女たちのみずみずしい魅力を表現している。石川は生まれ育った沖縄で出会った人々の肖像とスナップを集積した。以下は、アサヒカメラ4月号の木村伊兵衛写真賞で掲載された作品解説。

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 写真表現のあり方に格別な思いを抱くものにとって、ふたりの受賞作は大きな実感とともに迎えられるのではないだろうか。2014年は石川竜一の突出した躍進が注目された。それは写真によって世界の真芯をつかみとろうとする、彼の行為の底知れぬ生々しさがストレートな写真の力へ期待する渇きを満たした反応でもあったと思う。石川の2作は作品名どおり、沖縄の人びとの肖像集とその拡張版ともよめるスナップ群。鮮烈な光線と色、そこかしこに世の仕組みの周縁にいる人びとの濃厚な気配が充満し、大判の造本と相まって目が眩むような視覚体験を導く。その底にあるのは際の際まで自己を追い詰めた果てに、写真で生き長らえ、すべてを受けとめ認識しようとする石川の熱情だ。

 川島小鳥の『明星』もまた著しく密度が高い。ベストセラーを続ける前作『未来ちゃん』と同じく、被写体の魅力を高純度で引き出し、こぼれんばかりに盛り込んでいる。川島は台湾とそこに住まう人びとに3年間没入、老若男女を撮るうちに、若い人に向かう写真愛をあらためて確信し、若さのみずみずしさ、たのしさ、輝きを本全体で展開する。ここにあふれる多幸感は万人の胸に迫るが、それは川島がその写真世界で徹底して表現しようとする、現実を「たのしい星」として夢見ることの集積により生み出されることが重要だ。少年少女たちを自分と同じ目の高さで等しく見つめることは、縦横の写真を同じ大きさで束ねた特異な造本にも表されている。

(池谷修一・アサヒカメラ編集部)

 なお、アサヒカメラ4月号ではふたりの受賞作品と選者による選評、また「全受賞作解説・木村伊兵衛写真賞の40年」と題し、識者13名がこれまでの受賞作をつぶさに解説している。あわせてご覧いただきたい。

石川竜一(いしかわ・りゅういち)
1984年沖縄県生まれ。沖縄国際大学社会文化学科卒業。在学中に写真と出会う。2010年、写真家 勇崎哲史に師事。11年、東松照明デジタル写真ワークショップに参加。12年『okinawan portraits』で第35回写真新世紀佳作受賞。私家版写真集に『SHIBA踊る惑星』『しば正龍 女形の魅力』『RYUICHI ISHIKAWA』がある。

川島小鳥(かわしま・ことり)
1980年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科卒業後、沼田元氣氏に師事。2006年、ひとりの少女を4年間撮り続けた作品で第10回新風舎平間至写真賞大賞受賞、2007年写真集『BABYBABY』 を発売。2011年、佐渡の友人の娘を撮り続けた作品『未来ちゃん』(ナナロク社)で第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞。

■第40回木村伊兵衛写真賞受賞作品展
会場:コニカミノルタプラザ ギャラリーC
開催期間: 2015年4月11日~ 20日
開館:10時30分~19時(最終日のみ15時)
休館日:無休
住所:東京都新宿区新宿3-26-11 新宿タカノビル4F
TEL:03-3225-5001