就職環境の好転から、科目負担の重い国公立大学と理系が敬遠される一方、私大文系の人気が徐々に高まってきました。そのトレンドが合格者の絞り込みとぶつかってしまい、入試をいきなり難化させたと考えられます」(渡邉さん)

 以前より狭くなった私大文系学部の門前に、受験者が殺到している、といったイメージだ。

 ちなみに国公立大学は17年度、18年度と志願者数・合格者数はいずれも横ばいで、前・中・後期合計の合格倍率もまったく同じ3.9倍。ところが私立大学は、一般、センター、一期、二期のすべてが前年を上回る倍率だ。

 関東だけでなく、関西圏でも私大の志願者は軒並み増加。一方で、大学による合格者数の絞り込みも顕著だ。なかでも産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)は志願者増加の指数でトップだが、18年度の合格者数はかなり減少している。

 受験生のボリュームゾーンとされる偏差値50台の層が狙う大都市圏の中堅大学ほど、18 年度は入試難易度の変化が大きかったようだ。

■19年度入試も厳しさは変わらず

 近年はネットを利用した出願を導入する大学や、併願すると受験料が割引される大学が登場し、1人あたりの出願校数が増えてきたともいわれる。渡邉さんも「実志願者数の増加以上に、併願数の増加により見かけの志願者数の増加が目立っているという見方もあります」と話す。

「実質的に少しずつ見えているのは、国公立大から受験科目の少ない私立大への流れです。就職の不安がやわらいだことで私大文系を選ぶ受験生が増加。さらに、入学定員管理厳格化の影響から、入試の難化を心配して出願校を増やすという安全志向的な心理もあると思います」

 気になる19年度入試の傾向だが、「18年度よりも易しくなることはない」と渡邉さんは言う。

「入学定員管理厳格化を受け、これからの絞り込みの程度は大学によって異なり、大きな傾向を予測するのは困難です。けれども、この状況を受けて、『合格できる大学を探そう』と安全志向に走るのは残念です。同程度の難易レベルの大学であっても大学の特色は全く異なります。大学の方針などを読み込んだ志望大学研究が大切になります。しっかりした大学選びが受験勉強の励みになるはずです」

 受験を巡る環境は、受験生にとって厳しくなっている側面があるが、浮足立つことなく、後悔のない大学選びをすることが、逆境を乗り切る何よりの秘訣といえそうだ。

(文/笠木恵司)

※アエラムック「就職力で選ぶ大学2019」から抜粋

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