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東京を中心に1960~70年代に建てられたビルを写真に撮り集め、新著『ヤバいビル』(朝日新聞出版)を刊行した三浦展さん。取り上げたビルは、誰も知るような有名な建物ではなく、また著名な建築家の作品でもない。しかし、どのビルも独創的で味わいがある。古いビルの魅力や面白さとは――。建築家の馬場正尊さんとの対談第三弾。話はさらに、活力を失くしつつある街の再生と建築の関係にまで広がっていく。
■モダンが古くて味のあるものに見えて来た
三浦:どちらかというと、僕は木造への“萌え”は前からあったんですよ。しかしコンクリート住宅への萌えはなかった。ところが、中目黒だ、裏原宿を歩いていると中古家具屋にファイバー製のイームズのイスの中古品が出てた。色がはげたやつ。木造住宅や木製家具が古くなって味が出るのはわかるけど、プラスティックやファイバーが古くなって味が出るという感覚があるんだなとそこで初めて気が付いたんですよ。
馬場:なるほど。モダンはずっと新しかった。新しいからモダンなのに、経年していった時の美学がある、というのをはじめて気が付きはじめたのがその時代かもしれないですよね。
三浦:そう。インダストリアル系もそうです。パシフィックファーニチャーサービスもそうですね。
馬場:どちらかというと建築系よりプロダクトの方が先にいっていたのかな。
三浦:そうかも。吉祥寺にあったカフェの「フロアー」とかめちゃくちゃよかったですよね。
馬場:かっこよかったですよねえ。今でもあの辺のデザインがリノベなどのベースになっている。
三浦:フロアーが99年の末くらいにきて、あと同じく吉祥寺の「ラウンダバウト」とか。モダンなものがボロくてかっこいいという感覚が、クリエイティブな人たちの感性にでてきたんだよね。
馬場:建物の選び方も安いすきまものみたいな、名建築でもない軽量鉄骨のくたっとしたやつに色加えるとか、ひと手間加えて生まれ変わらせているから。ああいうビルの使い方とかを最初にトライしたのは、飲食の人たちかな?
三浦:飲食とか美容室とかでしょうね。
■古い普通のオフィスビルの魅力
三浦:日本橋の裏の方のビルを案内してもらったときも、「なるほど、古いビルって面白いな」と僕も初めて思った。普通いいと思わないよね。
馬場:名もなきボロビルですよ(笑)