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「多くの仕事がAIに奪われるため、大半の人間にとっては受難の時代になる」。そんな言説に対し、戦々恐々としているビジネスマンも多いだろう。知能指数だけでいえば、AIはすでに人間を超えているといわれている。そのなかで、人間はどう生きるべきか? AIにはない人間だけの特性があるのなら、それをどう見出し、生かし伸ばしていったらいいのか?
一流アスリートや有名アーティストのメンタルマネジメント法を指導し、最近『先生、ウジウジ・イライラから一瞬で立ち直る方法を教えてください!』(朝日新聞出版)を刊行したスポーツドクター、辻秀一さんは「AIが普及する時代こそ、『心を整える技術』をいかに磨くかが、生き残りの分かれ道になる」と話す。辻氏に、「AI時代、本当に生き残る人材」になるための極意を聞いた。
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AIの特性といえば、計算力やデータ処理能力の高さ。たとえば、「このコラムを、より興味深く読んでくれそうな読者に届ける」という命題があるとしたら、AIは、みなさんが過去に閲覧したり検索したりしたデータから、たちどころに、それも相当な精度で「このコラムを届けるべき読者リスト」を引き出すことができるでしょう。
いうまでもなく、これは人間の処理能力の比ではありません。あるいは、グーグル社などが取り組んでいる自動運転が実用レベルにまで発展すれば、AIが、人間のドライバーよりも正確に、しかも渋滞を上手に避けながら、最短時間で目的地へと運んでくれるようになるはずです。
計算やデータ処理といった分野でAIと戦おうとするのは、いわば「負けることがわかっている戦い」なのです。かくなるうえは、AIと同じ土俵ではなく、まったく違う土俵で生きること――AIにはない「人間だけの特性」を存分に発揮する道を、私たちは見つけなくてはなりません。AIと勝負するのではなく、AIと共存し、AIを人間のために利用する、そんな人材になるということです。