――そんなタイトなスケジュールで準備は大変だったですね。

「そうなの。ミュージカルの仕事を依頼されたら、もちろん即座OKしようと思っていた。でも半年とか数か月準備期間にあてようと考えていたの。ところが現実的にはそれは不可能だった。でも準備期間がないからという理由でこの仕事を断りたくなかった。とてもやりたいと思っていた役だから。人生一度の機会かもしれないし。10代の頃からずっと歌い踊ってきたから。一度練習すれば勘が戻って来るかと思ったの」

――子供の頃は聖歌隊などにも入っていたのですか?

「学校の学芸会とか聖歌隊などでも歌ったし、家で父と一緒に歌ったりもした」

――ミュージカルはよく見に行きましたか?

「子供の頃の誕生日のプレゼントは、毎年家族でミュージカルを見に行くことだったの。ウエスト・エンドで(ロンドンのブロードウエイにあたる)いろんなミュージカルを見たわ。『マンマ・ミ-ア!』、『ライオン・キング』『レ・ミゼラブル』『アベニューQ』。ヒット作は全部見に行った。そもそも誕生日のプレゼントはバレエ鑑賞だったの。すごく小さかったころは、劇場の椅子の上にクッションを置いて観たものよ」

――子供の頃や10代のころ、どんな音楽を聞いていたのですか?

「父が自分の好きな音楽を私に聞かせたので、その影響が大きい。ビーチボーイズにストーンズ、ジョニ・ミッチェル。ジェームス・テイラーにキャロル・キング。ニック・ドレイクとか。それらの音楽が私の好きな音楽として基本にあるの」

――去年『美女と野獣』や『ラ・ラ・ランド』が大ヒットして若い世代の間でミュージカルの人気が高まりつつありますが、それについてどう思いますか?

「そうよね。子供の頃から『マイ・フェア・レディ』や『サウンド・オブ・ミュージック』などに親しんできた。ジンジャー・ロジャースにオードリー・ヘプバーンやマリリン・モンローなんかも歌い踊ったわ。ミュージカルは私の大好きなジャンルなの。『ラ・ラ・ランド』のヒットなどもあり、このジャンルの映画の人気が戻ってきたのはとても嬉しい。多くの人がこういった映画を見たいと感じているし、ミュージカル映画に対する関心が高まってきたのでラッキーだと思う。だからそんな状況の中でこの映画を作るのはエキサイティングな体験だった。観客が待っていてくれるという気持ちになれたから、頑張ったのよ」 (在ロンドン 高野裕子)