また、きょうだいで保育所に通うようになると、一人だけ熱を出して保育所を休むこともある。親が仕事を休めば、無条件で元気な子も預かってもらえないことが、明日香さんの住む自治体の公立保育所でのルールとなっていた。母親自身が高熱を出して子どもを保育所に預けようとしても、保育士は常に「お母さん、本当に熱があるのですか」と疑った。
年長クラスになると、就学前の健康診断が小学校で行われる。明日香さんの子どもが通う保育所では、保育士が、園児の親の誰がどの学校で健診なのか予定をつぶさにチェック。母親らが昼過ぎに健診のためにお迎えに行くと、「今日は14時から就学前健診ですよね。お母さん、午後はお仕事お休みですよね。下のお子さんも連れていってください」と、まだ保育所で昼寝中の子どもを起こしてまで連れていけと命じる。さらには、保育士が「小学校に連絡してみたら、子どもが遊ぶスペースがあるというので」と押し付けるような口ぶりで、妹や弟は保育所から追い出された。
「子どもを第一に考えてのことなら納得しようがあったが、職員第一という考えがあからさまに見えた。楽をしたいから預かる人数を減らしたい。だから早く帰って。私たちは極力、仕事をしたくないといわんばかり」
と感じて、心穏やかでいられなくなった。
お箸の使い方も保育所で教えてくれることはなかった。「ご家庭でお箸が使えるようになったら教えてください。それから保育所でも使いますので」という姿勢。栄養士の明日香さんは、「子どもが使えそうだ、使いたいタイミングだというのを見計らって、保育所と家で相互に示し合わせて箸を使ってみる。そうした協力をするほうが良いはず」と、眉をひそめた。保育のほとんどが、「ものは言いよう」で、極力仕事を減らしたいというだけの意識が保育士に働いており、親子にとって冷たい保育と化していた。
一方で、明日香さんが勤務していた保育所では、保護者支援にも手厚く温かい保育だった。決して、保護者の仕事が休みだからといって子どもを預けるなとは言わない。むしろ、子どもを預けて普段はできない用を済ませたほうがいい。虐待防止のため、リフレッシュして子どもと向き合えるようにしたほうがいい、という考えだった。土曜保育についても、申請があれば勤務証明の提出なしで預かった。