日本で使われている検索エンジンのシェアは現在、Googleが90%、Bingが5%、その他が5%ほど(Yahoo!は2010年からGoogleの検索技術を導入)。特定のWebサイトを検索結果の上位に表示させる手法であるSEO(検索エンジン最適化)対策は、当然ながら対Googleを中心に行われている。
世界でも圧倒的シェアを誇るGoogleは、2011年に英語圏を中心にしてWebサイトの評価基準の大幅な更新「パンダアップデート」を実施し、その後「ペンギンアップデート」などの大きな更新をし続けている。「それは良いWebサイトと悪いWebサイトを判別し、その評価を白黒はっきりさせるという画期的な宣言でした。日本でパンダ・ペンギンアップデートが反映され始めたのは2012年半ばですが、以来、安易なSEO対策の効果は低下し続けています」と話すのはSEO対策の第一人者として知られる鈴木良治さん。
SEO対策についての書籍として異例の売り上げを記録した『SEO対策のための Webライティング実践講座』『成果を出し続けるための 王道SEO対策 実践講座』、そして新刊『Webプロジェクトを成功に導く 戦略的SEO思考』を発行した鈴木さんに、最新のSEO情勢をうかがった。
●玉石混交の情報が氾濫するSEO業界
SEO業界には様々な情報が氾濫しており、中には間違った情報も多くあるという。その根源にあるものは何なのだろうか。
「『情報が古いから信用できない』『Googleはそうは言っていないから間違っている』。SEO業界では、このようなセリフを頻繁に聞きます。当たり前ですが、正しいか間違っているかはデータなどの根拠に基づいて論じるべきです。しかし、さまざまなことが数値データとして収集できるWebの分野であるにもかかわらず、SEO対策では『新しいか古いか』『権威のある人が言っているかどうか』を根拠にした、分析とはかけ離れた基準で正否が判断され、誤った情報や解釈が氾濫しています。当然ですがGoogleをはじめとする検索エンジンは検索結果を操作するSEO対策を否定しており、決して『答え』は教えてくれません」
また、時としてGoogle発信する情報には、検索エンジンが望む世界を実現するための作為的な情報が含まれることもあるので、発表をそのまま信じるのはリスクがあるという。
「たとえば、現在のSEO業界では常識とされている『共起語』や『文脈』についてもそれは顕著です。共起語とは目的となる言葉と一緒に使われやすい言葉のことで、『カメラ』なら『ピント』『シャッター』『撮影』『写真』などが共起語となります。海外の情報を踏まえ、日本でも2011年頃から話題に挙がるようになり、現在では『カメラ』というキーワードに対策する場合、『カメラ』という言葉そのものをたくさん利用するより、共起語を適度に入れた方が自然な内容と判断され、検索エンジンに高く評価されるという見解が当たり前になっています。しかし、精度は日に日に向上しているものの、日本の検索エンジンはまだ共起語や文脈を理解できる水準にはないと推測されます」
その上、現在の主流であるコンテンツ自体を強化するSEO対策においては、この共起語を利用した有効な対策方法は確立できていないと鈴木さんは語る。しかし、SEO業界ではこれら共起語や文脈に関する議論はほとんどされず、生かす方法論も見あたらない中で、それらを前提としたSEOサービス提供が行われ続けているのが実状だという。
●SEO対策にとって日本は特殊な環境
鈴木さんが述べた共起語や文脈の否定は、SEO対策の知識がある人ほど、にわかには信じられない見解だ。そこで、それぞれの論拠を鈴木さんに投げかけてみた。