国が岡崎市消防本部に配備した全地形対応車「レッドサラマンダー」=岡崎市提供
国が岡崎市消防本部に配備した全地形対応車「レッドサラマンダー」=岡崎市提供
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大分県日田市の被災地で、土砂で寸断された道路を進む全地形対応車=岡崎市提供
大分県日田市の被災地で、土砂で寸断された道路を進む全地形対応車=岡崎市提供

 西日本を中心に襲った大雨は気象庁によって「平成30年7月豪雨」と命名されるほど記録的な災害となり、100人を越える死者を出した。救助活動が続いている中、全国で唯一の特殊車両である「レッドサラマンダー」が、7月6日未明、総務省からの要請を受け、出動した。

【画像】土砂で寸断された道路を進むレッドサラマンダー

 この特殊車両、いったい何がすごいのか。

 消防車両最大手で、国内販売の代理店をつとめるモリタの広報担当者は、レッドサラマンダーの強みについてこう語る。

「一般車両では通れない瓦礫やぬかるみがある道を走破できます。もう一点は怪我人や救助の人員・緊急物資を運べる点です」

 車両は、シンガポール企業が製造しており、現在、愛知県岡崎市の消防署に1台配備されている。岡崎市は、高速道路のインターチェンジに近く、東日本・西日本両方に出動しやすい。そして「津波の被害を受けない地域」として、総務省消防庁が配置した。

 レッドサラマンダーの出動は、昨年の九州北部豪雨に続き2度目だ。
岡崎市消防本部、消防課の職員はこう語る。

「各都道府県からの要請を愛知県が判断します。レッドサラマンダーを操作するには、大型特殊免許が必要で、岡崎市に勤務する隊員は、すぐに出動できるよう、日頃から準備しています」

 この特殊車両、1億1千万円とのことだが、モリタの広報によると、一概に高いとは言えないという。

「当然ですが、機能によって値段は変わってきます。特殊車両よりも高い車両もあれば、安い車両もあります」

 ネットでは、<日本に1台しかないのはなぜ? オスプレイ1機、イージス・アショア1機で、何台買えるんだ>という批判も起きている。

 消防課の職員はこう話す。

「全国に配置すればいいものではない。費用対効果がどれほどのものか、まだまだ検証が必要です。2回しか出動せず、どれくらいの活動ができるかわからないものを、国のお金ですぐに買えるわけではありません。維持費用もかかります。レッドサラマンダー以外の車両も各都道府県には配備されていますので、災害の対応は可能です」

 2013年に岡崎市に配備されてから、出動回数も少なく、「宝の持ち腐れ」と揶揄されることもあるとのこと。だが、「災害が発生しないことが一番です」と語気を強めた。

 レッドサラマンダーの成果については「まだ現地からの報告は上がってきていない」とのこと。西日本を中心に梅雨明けしたものの、まだまだ救助活動は続きそうだ。レッドサラマンダーの成果に期待したい。(田中将介)