「1年ってことはありません。もうちょっとやっています。ただ、結婚して1年ちょっとで妊娠して、つわりがひどくてできなくなったんです。その時も、夫はいくら説明しても、それは結婚した時の約束だといって、私を責めるばかりで、そんなに家計簿付けたいなら、妻がつわりで苦しんでいるのだから、自分でつければいいじゃないですか」(理恵さん)
「百歩譲って、つわりの時は仕方ないとしても、そのあともつけてないんです。現に今だってつけてないですし」(正義さん)
「そのあとって、つわりの後は出産でしょ。で、生まれてくれば子供の面倒に忙殺されて、それどころじゃなかったんです。で、育休が終わって仕事に復帰したら、もう毎日てんやわんやでそんなことするゆとりがあるわけないんです。そのことが、夫にはわからないんです。」(理恵さん)
その手の論争一つ一つが終わらずに続くのですが、永遠に聞き続けるわけにもいかないので、私はこうお聞きしました。
「で、高いお金を出して、ここでいつもと同じ言い合いをしたいわけではないと思うのですが、カウンセリングに何を期待されますか?」
理恵さんは、
「もめてはいますが、お互いに悪いところを直して、いい関係にしたい、という点では一致しているんです。ただ、自分が悪いことでも相手から話を聞くと冷静に聞けないところもあるので、第三者として冷静に話を聞いていただいて、どっちが悪いのか客観的に判断していただきたいんです。その上で、多くの事例を見ていると思うので、こういうケースはどうしたらいいかアドバイスが欲しいんです」
とおっしゃいます。正義さんにもお聞きすると、
「それは妻の言う通りです」
と言います。ご夫婦の意見が一致する唯一の点ではないかとすら思える貴重な一致です。そしてゴールにおいて意見が一致しているのは大きな強みです。しかし、これはなかなか難しいご注文です。
というのも、夫婦の問題に「善悪」とか「客観性」を持ち込むと解決しない、というのが多くの事例を見てきた経験だからです。
あなたなら、知人夫婦が理恵さんと正義さんのようにもめていて、客観的なアドバイスが欲しい、と言われたらどう答えますか?