杉山ジョージさん(右)と妻(本人提供)
杉山ジョージさん(右)と妻(本人提供)
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家事や育児を引き受けているのは夫である杉山さん(右)だ(本人提供)
家事や育児を引き受けているのは夫である杉山さん(右)だ(本人提供)

 働きながら主婦業もする。女性にとっては当たり前のように思われていることも、男性がやるとまだ風当たりが強いこともある。そして「主夫の妻」も時に複雑な気持ちを抱えるという。仕事をもつある男性が「兼業主夫」を名乗るようになった理由とは。「秘密結社 主夫の友」の会員で、放送作家として働く杉山ジョージさんのケースを紹介する。

【画像】いつもの風景、キッチンに立つ夫

*  *  *

「主夫」を名乗る僕の妻は正社員。夫の仕事は?と、よく聞かれる。

 働いていますよ、ちゃんと。でも、家事育児は中心的に僕がやっているので、言ってみれば“兼業主夫”という感じですね。なんで? まあ、その僕の方が自営業で時間の調整もきくし、家事も育児も嫌いじゃないので。

 いつもここで説明に詰まっていたけれど、ここしばらくは魔法の言葉を見つけた。

「妻の夢をサポートすることにしたんです」

 妻は服飾デザイナーをしている。小学生の頃に初めて描いた夢を、一度もぶれることなく追い続け、今そこにいる。子どもの頃、友達のお母さんに「将来、何になりたいの?」と聞かれ「洋服のデザイナー」と答えたら「そうなんだ。なれたらいいね」と言われた時、その言葉の向こう側に「そんなのなれないよ」という気持ちが見えて腹が立ったという。以来妻は「デザイナーになりたい」と思ったことはなく「デザイナーになる」と考え、あくまで「なる」ための最善策を探してきたという。

 僕と出会った20歳の時は専門学校生だった。3年生になり、就職の時期を迎えた妻が受けた会社はひとつ。今ほど売り手市場じゃない17年前。いや、売り手市場の今だって一つしか受けないなんてありえない。まあ結局いくつか受けることになるんだろうなと思っていたが、妻はその唯一受けた会社に就職することになった。決してすんなり入ったわけではない。一度は書類審査であっという間に落とされたのだが、その日のうちに会社に電話して「そちらの会社には私が必要だからもう一度考えた方がいい」と伝えていた。その様子を横で見ていて、ちょっとした戦慄が走った。

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妻は家事や子育てに向いていない