東日本大震災からもう7年が過ぎた。時が過ぎるのは早いように感じるが、復興が進まない地域の人たちにとっては一日一日がさぞ長く感じられることだろう。関東の多くの神社仏閣では、今でも日常的に「東日本大震災復興」と記された浄財依頼や催事が行われている。被災した神社仏閣が、まだまだ復興できていないためである。
●被災地で被害を受けなかった神さま
被災後、東北地方の神社仏閣の被害状況が研究されたことをご存じだろうか。活字メディアでも紹介されたので、多くの方々の目に触れたと思うが、簡単に言えば祭られている神さまによって被災状況に違いがあった――というものである。稲荷(いなり)神社は多大の被害を受けたが、スサノオを祭る八雲(やくも)神社・須賀神社、あるいは熊野神社は被害が少なかったと報告された(注)。
神さまのご利益的な側面から見れば、スサノオや熊野神社は水をつかさどる神であり、厄難避け祈願をするお宮なのだから、神さまのご威光が強かったということになるのだろう。
また、一方で稲荷神社が爆発的に作られたのが江戸時代以降であるのに対し、八雲神社や熊野神社が各地に作られた時代は総じて古い。日本神話の時代にまでさかのぼれる社もあるくらいだから、現代までに被災した回数は稲荷神社に比べれば数倍にはなろう。そう考えれば、古い神社は被害にあうたびに安全な場所へと遷座していったと考えるのが一番納得できる話である。先人の知恵は、このように神さまの姿となって残されてきた面もあるにちがいない。