「タイムラインにいい写真を揃えて載せないといけないので、他の写真と合わないものは、削除する。人に見せるために綺麗に撮ることを意識していたけど、ストーリーだと、誰に見られていようが関係なく、自分の好きなように投稿できる。あとは、インスタだと恥ずかしくて自撮りをしなかったけど、ストーリーなら安心してできる。ストーリーでその場の様子を投稿したあとで、いい写真が撮れたらインスタに投稿することもある」



 インスタグラム担当者は、ストーリーズ導入の目的についてこう話す。

「利用者が日常のあらゆる瞬間を、より気軽にシェアできるような方法を提供することです。インスタグラムは2010年にサービスを開始しましたが、コミュニティ(利用者)が成長するにつれ、 毎日の生活における特別な瞬間をシェアする場所として利用されることが増え、完成度の高い写真や動画が多く集まる反面、気軽に日常のちょっとした瞬間を投稿しづらいという声が聞かれるようになりました。そのような利用者のフィードバックを受けてストーリーズを実装しました」

 原田氏はストーリーズが流行するまでの過程を著書の中でこう説明している。

「当初は『いいね!』をもらうために何時間もかけて写真を撮っていた若者たちに『リア充疲れ』という言葉が広がり始めました。そうした中で、リア充ではなく自然体の自分を見せようとするときに、気張った写真じゃなくても気楽に載せられる気楽さで、ストーリーが広まっていきました」。

 ストーリーズの圧倒的支持の秘密は、「投稿した写真や動画が24時間で自動的に消える」ことによる「心理的なハードルが下がった」(インスタグラム担当者)こと、「手軽」、「皆がやっているから」という理由が大きいということだろう。

 若者文化に興味を持つことは時代の流れを掴むことだと原田氏はいう。

「若者研究=未来研究なんです。次の時代を見るためには今の若者をしっかり見たほうがいい。若者は10年後に中年になり、その価値観が日本社会に反映されていきます」

「インスタ疲れ」から「ストーリーズ」まで体験していく気概がこれからの若者文化を知る上で必要になってきそうだ。(田中将介)