告発状では、「A」と「B」と書かれた二人がこの問題についてのヒアリングに協力すると書いていますが、すでに報道されている通り、Aさんは伊調さんのコーチです。
──伊調選手は告発には関わっていないのですか。
まったく関わっていません。姉の千春さんにも連絡をとっていません。ただ、伊調さんの状況については、告発に関わった人以外にも心配している関係者が多数います。
本来であれば直接被害を受けた方が告発することが最善で、伊調さんに話を聞くべきだったと思う人もいるかもしれません。しかし、報道されているパワハラの事実をみればわかるように、伊調さんを含めて関係者が協会に対して直接的に声をあげることは無理です。
告発に関わることは、東京五輪で5連覇を目指す伊調さんに害が及ぶかもしれません。そこで、私が告発人になることで、協会関係者から来るであろう批判を受けて立つことにしたのです。
──告発状を出してからの内閣府の反応は。
返事がないのでこちらから電話をかけたのですが、内閣府の担当者は「調査は終了した」「協会のガバナンスには問題ない」と答えるだけでした(編集部注:内閣府は発言を否定)。「今後の参考にします」とも言っていましたが、告発状でヒアリングを受ける意志があると伝えていたAさんとBさんに、内閣府は話を聞くこともしていません。
──問題発覚後、内閣府は「調査をする」と言っています。
報道が出て、菅義偉官房長官が3月1日の記者会見で調査の可能性を示唆したから、方針を変更したのではないでしょうか。少なくとも私が電話をかけた時は、ヒアリングをする様子はまったくありませんでした。
──3月2日には、協会が伊調選手と栄氏にヒアリングを実施することを表明しました。協会はパワハラの事実を否定しています。
練習場を使わせない、コーチを外すなどのパワハラ行為について、正式に決定した文書は存在しないでしょう。だからといって、パワハラの事実がなかったわけではありません。伊調さんが練習場所として使用していた警視庁では、リオで4連覇を達成した後、マットを新調するために伊調さんとAコーチの名前で要請を出してもらい、マットが一新されました。しかし、伊調さんはそのマットで練習できていないのです。何か力が働かなくてはそんなことは起こりえないのです。パワハラの事実は明らかです。