そういう時、よく若い先生方が「人工呼吸器につなぐか、強心剤を使うか、どこまでやるのか、ご家族が決めてください、もう時間がありません! どうしますか!」って言うんです。そうすると家族は焦って、「ぜ、全力でお願いします!」となる(笑)。
それでまた心臓が動き始めてしまって、ICUに入って1泊50万円も100万円もする治療を2、3日続けて、結局亡くなるんです。その200万~300万円の医療費は税金で払う。どうしてこんな、無駄な医療をするんでしょうか。
こういう場合には、「蘇生しても植物状態で人工呼吸器につながれ、施設に入るか、家に連れて帰ってご家族が面倒を見なければならないのですよ」という説明の仕方をすると「いや、うちのオヤジはもう十分生きたから結構です」と言う人が多いですね。
また一番大事なのは、「ご家族の方が決めてください」ではなくて、「ご本人が元気だった時、どんな最期を迎えたいと言ってましたか」と聞くことです。寝たきりは絶対にイヤだと言ってました、そうですか、ではご本人の意見を尊重しましょうか、と。
家族としては、「蘇生をしないでくれ」というと自分の責任で親が死んだように思うので、かなり過大な負担になるんです。それが分からずに、あなたが決めてください、と言っている医者は多いですね、まだ(トホホ……)。
死に方のパターンは四つ。わずか7%しかないピンピンコロリ。比較的ピンピンしていてバタバタッと悪くなるがん。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全などは、良くなったり悪くなったり上下しながら弱っていく。そして、認知症の老衰は低空飛行ですね。死にそうで死なない。危なくなれば救急車で病院に来るから、また持ち直す。年齢や今までの経過を見ればいつ死んでもおかしくないのに持ち直すものだから、周りはヨーダみたいに900歳まで生きると思ってますよ。主治医に覚悟するように言われたのはもう2年も前だし、ずっと生き延びると思ってました、って(笑)。