お金は人を映す鏡」と私は思います。お金の使い方に、人そのものが映し出されるからです。よく「お酒を飲むと人間性が出る」とか「車の運転には性格が出る」と言われていますが、じつはお金の使い方のほうがより人間性や性格が出ます。

「お金を持つようになってアイツは変わったよね」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、お金を持ったから変わるのではありません。単にその人の性格が、大金を持ったことによってズームアップされただけなのです。

 では反対に、「出世する人」は、どのようなお金の使い方をするのでしょうか。答えは「会社のお金でも、自分のお金と同じように判断をする」です。

 たとえば会社の近くに、同僚と飲む時にも、職場の懇親会を開く時にも、使い勝手のいい飲食店があったとします。そこには、380円と580円の2種類のビールがあります。同僚と飲む時、あるいは会社のお金で飲む時に、どちらのビールをオーダーしているかで、その人の資質が問われます。3つのパターンで考えてみましょう。

 まずひとつめのパターン。同僚と自腹で飲む時には、いつも380円のビールをオーダーする人が、会社のお金で飲む時になると580円のビールをオーダーしていたら。周りの人は、「いつも安いビールしか飲まない人なのに、会社のお金だと高いビールをオーダーするんだな」と思うのではないでしょうか。

 次のパターン。同僚と自腹で飲む時にいつも580円のビールをオーダーしている人が、会社のお金で飲む時にも同じ580円のビールをオーダーしていたら。これは、周りの人にとっても違和感がありません。「ビールへの強い好みがある人なんだな」と感心されるかもしれません。

 そして最後のパターン。同僚と自腹で飲む時にはいつも580円のビールを飲んでいる人が、会社のお金で飲む時には380円のビールをオーダーしていたら、周囲の人はどう感じるでしょうか? 「この人は、自腹では高いビールをオーダーするけど、他人のお金だと安いビールでガマンしている、素晴らしい人だな」と感じるのではないでしょうか。

 会社のお金だからといってムダに使い、一方で自分のお金には細かいという人は、周囲から信頼されません。反対に、自分のお金はおおらかに使っていても、会社のお金については厳しいコスト感覚を持っている人は、周囲から信頼されます。

 たった200円の判断の差でも、その判断が周囲に与える印象は大きく変わってきます。正しいお金の使い方をすれば、そこで得た信頼はとても大きなものとなって、将来必ず自分に返ってくるのです。(取材・構成/平行男)

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