上西充子法政大教授は、「『働き方改革』って、長時間労働の是正、同一労働同一賃金、この二つのはずでしたよね。何で裁量労働制なんですか。裁量労働制って、長時間労働の是正のとちょうど反対のものです。」と述べ、「裁量労働制の本質」は、「みなし労働時間」によって、実際に働いた分の残業代を払わなくても良いというところにあると訴えかけた。またデータの不適切な使用という問題の本質は、厚生労働省の問題ではなく、「官邸が主導でやりたいことをやっていく、やりたいようにやっていく」という手法にあると語り、私たち自身がきちんと国会を見ていく必要性があると呼びかけた。

 裁量労働制を問題が、生活に多大な影響を与えるということが、聴衆にも伝わったからなのか、聴衆からも良い反応が返ってきている印象を受けた。沿道では、「働き方改革のひみつ」と題されたパンフレットが配布されていたが、どんどん無くなっていく。パンフレットを配布しているスタッフに、反応を聞いてみたところ、「いつもよりも良い、手渡した人の10人に1人くらいは受け取ってもらえる」との答えが返ってきた。新宿駅を過ぎたあたりでは、音楽に合わせて、手を挙げる通りがかりの若者の姿も目にした。国会で追及を続ける野党の政治家と、根拠とされるデータに検討を重ねる専門家、裁量労働制の拡大に反対の声を挙げる市民だけでなく、一部の聴衆さえも一体になったようなデモだった。

 政府は、路上から挙がった声を真摯に受け止めるべきだ。2月21日に、加藤勝信厚生労働相から、施行延期を含めた自民党内での議論について報告を受けた安倍首相のコメントは、「しっかりと党内の理解を得るように」だったそうだ。党内をまとめるのも結構だが、国民に対して真摯に説明をするのが先ではないのだろうか。自民党、あるいは経済界ではなく、働く人々のためになる政治を行う必要があるのではないか。政府には、今回の問題に真摯な態度で対応してもらいたいと思う。(諏訪原健)

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諏訪原健

諏訪原健

諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した

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