そこで、私は誤解が生じないように、あくまで取材であり、自分がユーザーでないことを伝えるようにしている。
「I don't use a drug. I want to cover drug business.」(私はドラッグを使いませんよ。取材に来ました)
「Cover?」(取材?)
「Yes. Just cover.」(ドラッグの取材に来たんです)
「I see.」(わかった)
このように案外と受け入れてくれるのだ。このようにきちんと説明すれば伝わるし、あらぬ誤解を生んで、友情に亀裂を入れてもつまらないので、取材の際には、なるべく自分の目的は話すように心がけている。
ただし、現地を案内してもらうとなると、やはり精通した人物がいい。その場合、どうしても麻薬のユーザーだったりすることもあるので、気が抜けないのだ。ニューヨークでの取材で郊外にある麻薬販売スポットに案内してくれたのも、そんなユーザーの知人である。
「It is near. But you shouldn't use the camera.」(この近くだ。カメラは出すなよ)
「Why? It's near, right?」(どうして? もう少し先なんだろ?)
「Look at that corner.」(あの角を見ろよ)
「Corner? I can see a standing man.」(角? 人が立ってるけど)
「That is a corner man. He is a spotter.」(あれはコーナーマンだ。見張りをしている)
「Where is a dealer?」(売人は?)
「Hitters are near here. When the police come here, a corner man signals. Because they have drugs.」(ヒッターならもう少し先にいる。奴らは麻薬を持っているから、警察が来た時にコーナーマンがサインを出すんだ)