このような現状を打破するためにまず取り組むべきなのは、身体面の見直しだ。年々上半身、下半身とも体つきが大きくなっている大谷に比べると、藤浪はまだまだ細く見える。実際の体重も入団時はともに85kgだったが、昨年のプロフィールでは大谷は97kg、藤浪は89kgと差がついている。ただやみくもに体を大きくすれば良いというわけではないが、プロ入り1年目からローテーションで投げ続けてきただけに、いま一度しっかり鍛え直す期間は必要ではないだろうか。

 もうひとつ必要なのが投球の幅を広げる工夫だ。具体的に言うと、左右と緩急を使えるようになることが重要だろう。藤浪の投球の大半はストレートとカットボールであり、緩いカーブは持っているもののほとんど投げることはない。そして、カットボールと逆変化のボールもないのが現状である。2つの速い球種が中心となると、いくらスピードがあっても打者は対応しやすくなる。緩いチェンジアップ、カットボールとは逆変化のシュートなどをマスターすれば、現在の持ち球がもっと生きてくるはずだ。

 高校時代に藤浪を指導した大阪桐蔭の西谷浩一監督は当時“浪速のダルビッシュ”と呼ばれていた藤浪について、ダルビッシュのような器用さはなくタイプが違うと語っている。また、投げるフォームも打つフォームもしなやかでスムーズな大谷とも当然違う。しかし、良い意味での荒々しさを持っていることはダルビッシュや大谷にはない藤浪の魅力である。これまでの実績が見事だっただけに、不振に陥った時の反響もまた厳しいものになるが、それを乗り越えて再び大谷とともに世代を牽引する選手になることを改めて期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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