極めて順調に見えた藤浪のプロ生活が暗転するのは4年目のことだ。開幕からは3連勝と素晴らしいスタートを切ったものの、その後は5月から7月の3カ月間でわずか1勝と低迷。7月8日の対広島戦では序盤に5点を失う完全な負けゲームで8回、161球を投げ、金本知憲監督による懲罰登板だと話題となった。その後も本来の調子は戻らずこの年は7勝に終わる。そして、復活が期待された昨年は状態がさらに悪化。5月下旬から8月中旬まで二軍で調整する日が続き、わずか3勝でシーズンを終えた。
藤浪の課題を簡単に言うと、制球難ということになる。昨年は59回を投げて45四球、8死球、5暴投を記録しており、完全に自滅で試合を壊していることがよく分かる。そして制球難の原因がそのフォームにあることは間違いない。
高校時代から左足をかなり三塁側に踏み出し、そこから体をひねって投げるフォームが特徴的であり、どうしても横回転するきらいがあった。プロ入り2年目からはステップの位置を修正したものの、基本的には大きく変わっておらず、どちらかというとサイドスローの体の使い方に近い。当然、左右のぶれは大きく、その形で上から腕を振ろうとすると無駄な動きが大きくなり、ボールが抜ける原因になるのだ。
ただし、前述したように、その傾向は今に始まったわけではない。結果を残していた入団から3年の間でもリーグ最多与死球と最多暴投を2度ずつ記録しており、荒れるボールをうまく利用していたという面もあるのだ。特に右バッターは150キロを超えるスピードボールが胸元に来るというのは脅威であり、この「抜け球」が外の逃げる変化球を生かす良いスパイスになっていたとも言えるだろう。
それよりも気になるのが、下半身の粘り強さとフォームの「割れ」の不足である。高校3年夏の甲子園や14勝を挙げた2015年と昨年のフォームを見比べてみると、昨年の方が明らかに無駄な力を抜こうとしている。しかし、その脱力が上半身だけでなく下半身にも及んでいることが問題だ。その結果、ステップは淡泊になり、投げる側の右半身も早く出て「割れ」ができない状態に陥っているように見える。これではいくら上背とスピードがあっても、打者は威圧感を受けることはないだろう。