最期だから、とこの時期のケアはつい力が入り過ぎがちです。それで家族が倒れてしまわないように、できるだけいつものペースを守るようにしましょう。

■好きなものを好きなだけ好きなときに

 以上のような症状は、治療可能な病気の影響の場合があり、医師の判断が重要です。とくに感染による炎症などがないことがはっきりしたら、気持ちの整理を含め、最期を迎える準備が必要です。本人が会いたい人がわかっていれば、会えるように手配します。生前にしておくべき本人の意思の確認や諸手続きも早めに進めておく必要があります。

 当然、食は細くなってきます。意識がはっきりしているうちに、何でも好きなものを好きなだけ、好きなときに食べさせてあげましょう。この段階ではメニューも量も、本人の好みに合わせます。最期を迎えた患者にとって何よりの喜びにつながり、家族も「喜んでくれた」という満足感を得ることができるでしょう。

 下顎(かがく)呼吸と呼ばれる下あごをしゃくるような呼吸に続き、しばらく呼吸が止まってまた再開することを数回繰り返すと、多くの場合、いよいよ最期を迎えます。

 呼吸が止まれば、あごや胸の動きも止まります。あとで主治医に報告するために、ここで時間をチェックし、脈も確認します。呼吸が止まれば、じきに脈もふれなくなります。

 ただし、このタイミングで患者のそばに居られるとは限りません。がんなどは、突然、急速に悪化してしまい、その時期を予想するのは困難です。高齢者の場合は、普段と変わらないまま最期になる場合もあり、どちらも誰も最期に立ち会えなかったケースは珍しくありません。

■呼吸停止なら主治医へ連絡 救急車は呼ばない

 呼吸が止まったことを確認したときに気をつけたいことがあります。それは、あわてて救急車を呼ばないことです。救急車を呼んでしまうと、それまで「在宅」でやってきたことが台無しになってしまう恐れがあるからです。

 呼吸が止まった患者がいれば、駆けつけた救急隊員は当然、心肺蘇生を始めます。これで呼吸が戻れば、病院へ搬送しあらゆる方法で救命処置が施されることがあります。その結果、人工呼吸器や人工栄養の管につながれた状態となります。

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