※東京商工リサーチ調べ。2017年は1〜11月時点
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※東京商工リサーチ調べ
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 2017年も人々の胃袋を満たしてきた国内外食産業では倒産件数が高水準で推移しており、1~11月累計値で昨年の年間実績を上回った。10月にはカフェ感覚のカジュアルなステーキ店として人気を得たこともあった「KENNEDY(ケネディ)」などを展開するステークスが経営破綻。25兆円規模の市場の移ろいやすい顧客ニーズをめぐる争奪競争は激化する一方だ。

【月別・年別表】飲食店の倒産件数の推移

 17年1~11月の飲食業倒産件数は、調査会社の東京商工リサーチの調べで703件となり、昨年の年間実績639件を上回った。統計を確認できる1997年以降で最高だった11年の800件に迫る勢いだ。外食産業は参入障壁が低いが、材料費などの原価が売り上げに占める原価率が総じて高く、食材価格上昇や人手不足が経営を圧迫しており、競争激化で集客に陰りが出ると一気に経営が悪化するパターンが多い。

 10月に破綻したステークスは、気軽にステーキを食べられることから一時は人気を得て出店を加速し、業容を拡大した。ファミリーレストランが日常的な食事の場とすれば、ステーキ店は非日常的で特別の食事の場だった従来のイメージをくつがえし、世の中には肉ブームが到来していた。立ち食いスタイルで新規参入してきた「いきなり!ステーキ」は早くて安く、顧客の目の前で注文に応じて肉をカットする斬新さが支持されて快進撃。新興勢力に顧客を奪われたステークスは来店客が減少する中、値引きサービスを繰り返して収益が悪化した。

 商工リサーチ情報本部の関雅史氏は、急激な店舗展開が「逆に裏目に出ることもある」と述べ、ステークスでは期間限定のサービスが恒常化したとみている。顧客の選択は厳しくなっているとし、「ただ安ければいいというわけではない」と話す。顧客には節約志向もある一方で、いいものにはお金を使うという傾向もあるという。

 日本フードサービス協会によると、国内外食産業は15年で約25兆円の規模となり、1997年の約29兆円をピークに市場は縮小している。少子高齢化が進む国内市場ではコンビニエンスストアやスーパー、デパート地下の総菜売り場が充実してきており、コンビニでイートインスペースが普及するなど、「中食」と呼ばれる分野が急成長している。顧客の節約志向もある中で、人手不足や食材価格の上昇などもあり、外食産業の経営は厳しさを増している。

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あの有名外食チェーンも厳しい