しかしグラム上院議員は米メディアに対し、たとえ北朝鮮の核ミサイルで東京とソウルが犠牲になるにしても「トランプ大統領はリージョン(地域)よりもアメリカを選ぶ(The President is picking America over the region)」と断言しました。アメリカ大統領の最優先課題は「米国をどう守るのか」。北東アジア地域の被害よりも、アメリカ本土に届く核ミサイルがない段階で北朝鮮を叩かないと、米本土がICBMで反撃されるようになってしまうことを恐れているのです。

――北朝鮮問題で「日米は100%共にある」と繰り返す安倍首相は、日米首脳会談後の共同記者会見でトランプ大統領に「米国経済が一番で日本が二番。それでいいか」と迫られた時にも反論できませんでした。この点は、尾形さんがネット番組に出演された時に動画再生をしながら解説されていましたね。いまある北朝鮮問題でも安倍首相が、多大な犠牲が出る日本の立場を、トランプ大統領にきちんと伝えられるのかは疑問ですが。

尾形氏:共同記者会見でトランプ大統領に「米国経済が一番で日本は二番、それでいいか」と言われた時に、冗談でもいいから「私たちは一番を目指します」みたいなことを言わないといけないと思います。言い返せなかったのは、今の日米首脳の関係を象徴しているのかなと感じています。

――「北朝鮮への軍事オプションを決行する。それでいいか」と言われた時にも安倍首相は何も言い返せないのではないのでしょうか。

尾形氏:国会で徹底的に議論をすべきです。トランプ政権の論理を受け入れて「日本人が100万人規模で犠牲になるリスクが現実にあるが、そのリスクよりも北朝鮮がICBMを完成させてしまう方が日本にとってもリスクが大きいのだ」と同調する立場もありえますが、その論理をどうやって展開するのかは私には全く分かりません。

 なお、日本人に100万人規模の多大な犠牲(死者)が出ることは私だけではなくて、1994年に北朝鮮危機に対応したウィリアム・ペリー元国防長官も同じことを言っています。安倍首相が「今は圧力をかける時だ」と言っていることについて聞かれて、こう答えています。「外交の不在や見境のない発言は、非常に壊滅的な核戦争に突入する条件を醸成してしまう。実行可能な軍事オプションがあるのなら私もそれを薦めるかもしれませんが、そんな解決策はない。私が驚くのは、実に多くの人が戦争がもたらす甚大な結果に目を向けていないことです。戦争は日本にも波及し、核になれば、その被害は(韓国にとって)朝鮮戦争の10倍に、(日本にとって)第二次世界大戦に匹敵する大きさになります」。

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全く違う韓国と日本の対応…