12月1日の日経新聞電子版にこんな見出しの記事が載っていた。
『コメ生産、来年は微増 減反廃止後初の需給見通し 業務用に不足感、高値続く?』
「減反」とは、国が毎年秋、主食米の生産上限を都道府県に配分し、これを市町村、農家へと細分化してその実現を目指す政策だ。基本的に、コメの需要が年々下がることを前提に、農家がなるべく主食用のコメを作らないように様々な補助金を支給したりして、無理矢理コメの生産量を減らそうとしてきた。
何のために生産を減らすかと言うと、もちろん、コメの価格が下がらないようにするためである。
だから、「減反廃止」という言葉から私たちが想像するのは、コメの価格が下がるということだが、この記事の見出しでは、どうもそうはならないらしい。どうしてそんなことが起こるのだろう。
■消費者でなく農協を向いた安倍自民党政治
コメがたくさん生産されると価格が下がる。消費者にとっては嬉しい話だ。
しかし、農家はもちろん収入減になるから嬉しくない。そして、価格に応じて手数料を取っている農協も嫌がる。さらに、農協は、兼業農家の兼業収入を当てにして銀行・保険業務を行ってその収益の大半を稼いでいる。コメの価格が下がれば、規模の小さな兼業農家は廃業に追い込まれる。農協からみれば死活問題だ。
農家や農協が困って、コメの価格が安すぎるからもっと値上げしろと叫ぶと、なぜか自民党という味方がいて、コメ価格を引き上げてくれる。だから、農家や農協は、選挙で自民党を応援し、献金もする。この構造を支える大黒柱として機能してきたのが「減反政策」だ。
つまり、減反は、農家・農協と自民党の間の合法的な贈収賄関係を成立させる政策だった。
では、自民党は、減反廃止でこの関係に終止符を打つのだろうか?
そんなことはあり得ない。自民党は引き続き農家の票が欲しい。だから、彼らをつなぎとめるために、減反を止めてもコメの価格は下げられないということになる。