憲法改正をめぐってすきま風が吹く山口那津男公明党代表(左)と安倍晋三首相 (c)朝日新聞社
憲法改正をめぐってすきま風が吹く山口那津男公明党代表(左)と安倍晋三首相 (c)朝日新聞社
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 総選挙に圧勝し、悲願の憲法改正に向けて準備を進める安倍晋三首相。そこに強力なブレーキをかける政治家があらわれた。公明党の山口那津男代表だ。

 山口氏は12日に放送されたラジオ番組で、憲法改正の発議には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要なことを踏まえ、「それ以上の国民の支持があるくらいの状況が望ましい」と述べた。過半数の賛成で改正が決まる国民投票でも、3分の2以上の賛成が見込めなければ改憲案に反対することを示唆したものだ。

 同党で憲法調査会長を務める北側一雄衆院議員も歩調を合わせている。10日には、憲法改正の具体的な内容について「事前に与党協議をする類いの話ではない」と述べ、改憲案を事前に与党間で取りまとめることを否定した。

 公明の現役幹部が安倍首相を次々にけん制したことに、驚きの声が広がっている。同党関係者は「これほどの発言は創価学会の幹部の同意がないと言えない」と話す。

 公明が安倍首相の改憲路線に批判的になった背景には、主に二つの理由がある。一つは学会員の公明離れだ。

 13年の特定機密保護法に始まり、安保法制での集団的自衛権の容認、共謀罪と、公明は安倍政権を支え続けてきた。それが、10月の衆院選では公示前から6議席減の29議席。比例の合計得票は697万票で、16年参院選から約60万票減らした。自民党と選挙協力を始めた2000年以降の国政選挙では、初の700万票割れだ。メディアでは希望の党の敗北ばかりが報道されているが、公明党も惨敗だったのだ。

 自民関係者は言う。

「公明の議員は『地元に帰ると学会員から批判されて大変だ』と嘆いていた。これは、選挙で学会の支援を受けている自民党議員にとっても深刻な問題です」

 もう一つの理由は、学会の池田大作名誉会長の“意志”だ。池田氏は、01年には憲法9条の改正には反対する考えを明確に示している。その池田氏は現在、公の場に姿を見せていない。安倍首相の憲法改正論にも、何の意見も表明していない。前出の公明党関係者は言う。

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