今年9月27日、安倍首相は保育所の整備や教育無償化に向けて、企業からの拠出金を3000億円増やすよう経済界に要請しました。保育所の待機児童数は今年4月時点で2万6千人。待機児童の存在は、女性の就業を抑制し、子どもの貧困や少子化にもつながるため、国が保育所整備に力を入れていることは評価できます。しかし、企業に拠出金を求めるより前に、今の保育制度で予算が有効に使われているのかどうかの点検が必要です。
国は、保育効率化の取り組みを普及させていくべきであり、さらにより根本的な問題として、保育を内閣府、厚生労働省、文部科学省の3省庁で所管したり、保育の必要性が認定されなければ入園できないしくみなど、非効率な制度設計自体の見直しにも取り組むべきです。多くの国では保育の省庁は一元化され、親の就労の有無に関係なく、すべての子どもに保育を受ける権利が付与されているのです。
(文/日本総研主任研究員・池本美香)
参考文献:池本美香「ニュージーランドの保育におけるICTの活用とわが国への示唆」日本総研『JRIレビュー』2017 Vol.6, No.45/池本美香「幼児教育・保育の現場から見た『こども保険』の問題点と改革の方向性」日本総研『リサーチ・フォーカス』No.2017-009