■財政難をきっかけに効率化


<ニュージーランドの例>

 こうしてみると、わが国の保育制度や保育現場は無駄や非効率があまりに多いのです。新制度の検討でも、今の待機児童対策でも、「財源の有効活用」や「事務の効率化」という視点が非常に弱いといえます。これと対照的なのは、1980年代後半に大規模な保育制度改革を行ったニュージーランドです。

 国が財政難であったことから、改革の目的として、保育の質の改善、女性の就業促進に加えて、行政コストの削減が強く意識されました。そのため、まずは幼稚園と保育所の所管省庁を教育省に一元化し、指針や法律も一本化され、補助金も施設の種類にかかわらず利用時間当たりの補助金レートを定めて給付する疑似バウチャーシステムが導入されました。国の教育評価機関(Education Review Office(ERO))が定期的にすべての施設を訪問して、評価結果を施設ごとにウェブ上で公表するようになり、その情報が親の保育所選びに役立っています。国のリードでICTの活用が進み、今では各園と教育省がオンラインでつながり、子どもには入園と同時に全国生徒番号(National Student Number(NS))も付与されています。国は保育の最新の実態を把握でき、その分析を通じて政策の評価や改善が行われているのです。

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