
劇場用長編としては、滝藤賢一さんの初主演作だという。「ひみつのなっちゃん。」は、死んでしまった先輩ドラァグクイーンの葬式に向かう旅の途中で、それぞれの美しい人生に出合っていく物語。
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ある時期までは、ドラマのレギュラーの仕事を断っていたという。21歳から9年間所属した、仲代達矢さんが主宰する劇団「無名塾」をやめたのが2007年。劇団時代も食えなかったが、映像に進出したからといって、生活は楽にはならない。それでも、レギュラー仕事を断り続けたのは、「ストーリーはゲスト中心に動くし、主人公とガッツリ芝居ができる」と思っていたからだ。
「生意気だったと思いますが、この世界に入ったら、そのドラマのトップと芝居したいじゃないですか。第一線で活躍されている方たちの芝居をいちばん近くで見られるんですよ! しかもゲストはかき乱す役だから、やりたい放題できますし(笑)。相手は横綱ですから、力試しじゃないけど、思い切ってぶつかっていくことができたんです。ただ今は、レギュラーも楽しめるようになりました。ゴリゴリにチャレンジしたいときと、のんびり和気あいあいとやりたいときと、作品によって変わりますよね」
23年公開の映画「ひみつのなっちゃん。」で、滝藤さんが演じたドラァグクイーンのバージンは、それでいうと、ゴリゴリにチャレンジしたい役だった。死んでしまった先輩ドラァグクイーン・なっちゃんの葬式に出席すべく、実家のある郡上八幡へと、バージンは、仲間と一緒に旅をする。
「初めは『プリシラ』や『レント』『キンキーブーツ』など、LGBTQ+の映画を観ていたんですが、どうもピンとこない。もちろん、苦しさや葛藤は勉強になりましたが、自分の中に落とし込めない。なにかキッカケみたいなものを掴みたくて、自分の中で女性の象徴であるオードリー・ヘプバーンやマリリン・モンローを観るようになったんですよね。彼女たちのしぐさや佇まいは美しく、気品があり、とても参考になりました」