21歳の学生だった僕は、銀座か有楽町のプレイガイドで2階席後方のチケットを買い、その初日の武道館公演を観ているはず。収集癖、記録癖がまったくないため、なんとも不正確な書き方で申しわけないが、マーティンのアコースティック・ギターを抱えてステージに登場してきた彼がゆったりとしたテンポで歌ってくれた「レット・イット・グロウ」は今も耳に残っている。リハビリ中という意識も少なからずあったのか、ギター・ソロのほとんどはバンド・メンバーのジョージ・テリーに任せてしまい、2人の美女(イヴォンヌ、マーシー・レヴィ)とソファに腰を下ろしてそれを眺めている8歳上の英国人の姿に、羨望を覚えたりもした。指定された席に向かうと米兵が座っていたことなども含めて、懐かしい思い出である。



 さて、すでに書いたとおり、16年に来日したとき、クラプトンは腕や脚に痛みを抱えていた。「もうギターが弾けないのでは」といった記事がウェブ上で書かれたりもしたが、今年3月にはマディソンとLAのフォーラム、5月にはアルバート・ホール、9月にもマディソンとフォーラムと、それぞれ数日規模ながらコンサートを行なっている。また、「ティアーズ・イン・ヘヴン」のヒットを生むこととなった映画『RUSH』の監督リリ・フィニ・ザヌックが手がけたドキュメンタリー作品『LIFE in 12BARS』が間もなく公開される予定で、その広報にも積極的に取り組んでいるようだ。やはりまだまだ『アイ・スティル・ドゥ』ということなのだろう。
(音楽ライター・大友博)
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