■上司部下という「役割」が争いを拡大する

 職場の人間関係が難しくなる、3つ目の視点が「役割」です。

 上司は、部下にエネルギーの供出を求めなければならないし、部下は無意識のうちにそれに抵抗します。

 多くの場合、上司が役割を押し付け、部下が逃げるという構造になります。それが争いを拡大させてしまうベースになり、やがて行き過ぎると「服従するか、しないか」の争いになってしまいます。

 特に、上司には、「服従させたい気持ち」が生じやすい。そうなると、実際の仕事の割り振りよりも、「どちらが上なのか。俺だ。お前は下だ」というような、“上下関係の確認の儀式”になってしまう。この儀式は、クセになることも多く、はたからはパワハラに見えることもあります。

 また、役割をめぐる戦いは、同僚間でも生じます。もともと怒りが生じやすいところに、このような仕事や責任の押し付け合いがあったら、そこには争いが生まれる。表面的にはありがちなケンカでも、本音は原始人的な「やりたくない」という思いがあります。

 この戦場は「ゴリ押しできるメンタルと押しつけの技術」の優劣で勝負が決まる部分が大きい。そのため、負ける人はずっと負け続けることもある。そうすると悩みが深くなるのです。

■戦場を生き抜くためには何よりも「疲労のケア」

 この「戦場」を生き抜くために、何よりも大事なのは「疲労のケア」です。

 今、上司の立場にある人も、部下や後輩など下の立場にある人も、自分自身の疲労をケアすることが、とても重要になってきます。

 疲労がたまると、どんな人も、職場でのちょっとした出来事、小さな刺激に対して、大きく感情が働いてしまうからです。疲労の度合いが通常の2倍、3倍なら、感情も2倍、3倍の大きさで発生してしまいます。

「怒りの多発地帯」である職場では、疲れてくると人間関係がギスギスしてくるのは、このようなメカニズムがあるからです。

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