しかし、会社は違う。ゴーイングコンサーンともいうが、解散しない限り永遠に続くことが前提だ。原則会社に寿命はない。だから会社は、常に動けるカラダ(稼げる体質)にしておくために投資は欠かせない。筋肉が経年劣化したなら、それに応じて、あらたに投資(筋肉増強)しなくてはならないのだ。

 ゆえに、会社にとっては現状維持、「何もしないこと」は、大きなリスクなのだ。

■大塚家具はなぜ凋落したのか?

 実際に、佐伯氏が指摘する例で、業績不振に陥っている会社がある。大塚家具だ。

「過去10年間の大塚家具の決算書を見ると、給与水準が業界の中では高く、さらに内部留保も潤沢で、ずっと無借金経営を続けてきました。ところが投資に消極的で、店舗や設備の拡充に力を入れてこなかったことから、競争力が低下。お家騒動や戦略変更を経た直近の決算書では、売上は前期比2割減で、46億円もの営業赤字を計上するなど、急激に業績が悪化しています」

 大塚家具については、書籍で詳細な分析を行っているため、ここでの言及は一部にとどめるが、同じ家具小売業のニトリが過去5年間で171店舗増やしているのに対し、大塚家具はわずか3店舗しか増えていない。

「人のカラダに例えるなら、『アスリート体型』のニトリに対し、大塚家具は『肥満体型』。どちらがより速く走れるかは明白です。不振の原因は事業戦略にもありますが、過去の筋力トレーニングの差が、今日の両社の明暗を大きく分けたことは、間違いないでしょう」

■危険なサインは、キャッシュ・フロー計算書に表れる!

 恐ろしいのは、会社も人と同じように、病気やケガをしてからでは遅いということだ。利益が減れば、その分だけさらに投資に金を回す余裕もなくなり、「気付いたときには手遅れだった」ということもありえる。

 では、どうすれば事前に危険なサインをつかめるのだろうか。佐伯氏は「決算書というと損益計算書や貸借対照表が取り上げられがちだが、『キャッシュ・フロー計算書』をぜひ確認してほしい」と話す。

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