●「人形供養」の意味合い

 人形供養には実は2つの面がある。

 ひとつは、子供の成長祈願の御礼から絵馬などと同じ意味合いで奉納されたもの。これは、子どもの形代を寺社に預け、神仏に見守ってもらうのである。

 もうひとつは、魂の入った“ひとがた”を成仏させるという意味合いのもの。つまり、古くなったり壊れてしまった人形を、「付喪神」が憑く前に寺社に引き取ってもらいたい、というものだ。

 西欧では人形を次代の子供たちにお下がりとして引き継いでいったりするので、かわいがっていた子どもが大人になったからといって、行き場をなくすことは少ない。

 一方、日本では人形のお下がりは珍しい。おかげでUFOキャッチャーでとったぬいぐるみでさえも、すぐに行き場がなくなってしまう。

●「人形供養」をしてくれる寺社は

 皇女が住持する尼寺であったことから多くの人形を保存する京都・宝鏡寺は、「人形寺」として名高く、人形供養をしてくれるお寺として全国から供養の依頼が寄せられている。毎年10月14日には「人形供養祭」が催され、境内にある人形塚へ供養の済んだ灰の一部が納められている。

 東京・明治神宮でも「人形に感謝する会」による「人形感謝祭」が行われ、式典とともに本殿回廊に陳列された人形たちは、祓い清められる。今年は10月15日(日)に行われるが、年々奉納される人形数や参列者数は増え、今や明治神宮の秋の風物詩といっても過言ではない。

 少し先の日程ではあるが、雛人形や兜づくりで知られる人形の街・埼玉県の岩槻では、恒例となった「人形供養祭」が毎年11月3日に開催されている。岩槻城址公園内の人形塚付近で、約20名の僧侶による読経があり、参加者の焼香とお焚き上げが行われている。

 3月の流し雛で有名な和歌山県・淡嶋神社は、奉納された人形たちが境内にところ狭しと並べられていることでよく知られている。受付できない日はあるものの、随時供養祈願を受けてもらえるので、遠方からの奉納者も多い。

 最近は、たくさんの寺社でも供養する人形を(郵送などを含めて)受け付けてくれるようになった。

 現在のような供養の形は、すでに江戸時代に原型はあったようだが、上記のような有名どころでも供養が始まったのは昭和や平成になってからである。

 これも、「人形」を簡単に作ることができるようになり、安価になったため、大事にしなくなったことによる一面なのだろう。モノが溢れる今の時代、「付喪神」も大忙しで、さぞや、てんてこ舞いしているに違いない。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)