しかし働く人々にとっては、育休を取得できなかったら、0~1歳時の育児にかけられる時間が短くなる。育児があまりできないと、育児の苦労も喜びもあまり経験できず、親である実感も得にくいのではないか。
私も、もし育休を取得していなかったら、今の育児家事のほとんどを妻が負担せざるをえなくなっていただろう。それでは育児の苦労も喜びも、この子たちの親である実感も、これほどまでには得られなかったはすだ。だから、自分の至らない育児行動に日々後悔を重ねてはいるが、育休を取ったこと自体は、後悔するどころかむしろ取って良かったと思っている。
今の日本では、子どもができた男性正社員の約36%は「育休を取得したい」と考えている(2015年厚労省委託調査)。しかし、子どもができた男性労働者のうち、実際に育休を取得した人はわずか3%(女性は82%)。しかもそのうち8割は「1ヶ月未満」の短い育休だ(女性は9割が「半年以上」)(2015年厚労省調査)。
男性正社員に「育休を取得しなかった理由」を尋ねると、その主要トップは、「職場が育休を取得しづらい雰囲気だったから」(27%)、「会社で育休制度が整備されていなかったから」(26%)、「残業が多い等、業務が繁忙であったため」(21%)、「休業取得による、所得減等の心配があったから」(19%)とつづく(2015年厚労省委託調査)。
たしかに、所得についていえば、育休を取得した期間は、手取り月収が8割ほど(生後半年目からは6割ほど)になり、取得期間に応じてボーナスも減ってしまう。
しかし、「会社で育休制度が整備されていなかったから」は、本来理由にならない。育休は、1年以上雇用されていて近々に契約満了しないならば、基本的に誰でも(非正規雇用労働者でも)制度上は取得できる。会社で育休制度が整備されていなくても、取得できるのだ。
この事実がもっと知られるようになれば、取得希望率はもっと高まるかもしれない。というのも、「休業制度・両立支援制度が会社に整備されていなくても法律上、制度の対象であれば利用できることを知っていた」のは、男性正社員のたった32%で、取得希望率36%とほぼ同率だからだ(2015年厚労省委託調査)。