平野ノラをはじめ、バブルを知らない世代の人間は、バブル期の文化に複雑な思いを抱いている。確かに、今の価値観をそのまま当てはめるなら、単なる成金趣味でダサいものも多い。ただ、その突き抜けた暴走ぶりが、一周回って格好良く見えるというのも事実だ。

 大阪府登美丘高校ダンス部が披露した「バブリーダンス」は、そんなバブルを知らない世代のバブルに対する憧れを巧みに表現している。だからこそ、バブル世代にも、バブルを知らない若い世代にも、同じように受け入れられて大ヒットにつながったのだ。

 人口の約25%が高齢者という「超高齢社会」である日本では、もはやどう転んでもバブル期のような好景気は期待できそうにない。若者が不足しているということは、労働力が不足しているということであり、若者文化の担い手も消費者も激減しているということでもある。

 登美丘高校ダンス部の高校生たちは、そのバブリーな衣装について「部員の母親や祖母が持っていたものにアレンジを加えた」と語っていたという。いまや、バブル文化を直接体験した世代は高齢者と呼ばれる年齢になりつつある。静かに滅びゆくこの国の歴史において、「バブル」は最後の最後に灯った光明である。五輪の聖火のように、この火種は新しい世代によって受け継がれようとしているのかもしれない。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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