近年の研究で、認知症を発症する可能性を高めるリスクが明らかになりつつある。喫煙もその一つだという (※写真はイメージ)
近年の研究で、認知症を発症する可能性を高めるリスクが明らかになりつつある。喫煙もその一つだという (※写真はイメージ)
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 認知症の発症に起因していると考えられるリスクがある。週刊朝日MOOK「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」では、認知症の主なリスクを医師に尋ねた。

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 認知症が発症するメカニズムやリスクとの関係についてはわかっていないことも多いものの、近年では研究が進み、認知症を発症する可能性を高める病気が明らかになりつつあります。現在考えられるリスクとしては、糖尿病や高血圧、アルコール、脂質異常症、脳梗塞(のうこうそく)、頭部外傷、喫煙、うつ病の8つが挙げられます。

 これらのリスクについて、順天堂大学大学院精神・行動科学教授の新井平伊医師はこのように話します。

「認知症は多因子疾患と呼ばれ、いくつもの要因が重なり合って起こる症状と考えられます。リスクが一つの場合より、二つ、三つと重なるほうが認知症の発症につながりやすいといえます。しかし、リスクは減らすことができます。将来の認知症を予防したいなら、今できる治療や生活改善をしっかりすることが重要でしょう」

 それぞれのリスクについて解説します。

■リスク1 糖尿病

 糖尿病と認知症の関係については、多くの研究が進められており、糖尿病の人は認知症の発症リスクが、糖尿病でない人と比べ、1.5~2倍高いという報告があります。糖尿病がなぜ認知症につながるのかについては、近年、いくつかのメカニズムが解明されつつあると国立長寿医療研究センター部長で大阪大学連携大学院招へい教授の里直行医師は話します。

「糖尿病は複雑な病気で、そこから認知症につながる要因もいくつか考えられます。主に、糖尿病により血管が障害されて起こる可能性と、代謝の働きの異常によって起こる可能性があります」

 糖尿病になると血管に障害が起こりやすくなり、血液循環が悪くなるため脳に十分な酸素や栄養が届かなくなります。さらに、長期にわたって血管が障害されると、血管が詰まる、出血するなど脳血管の病気になりやすく、それによって脳の神経細胞がダメージを受けて認知症のリスクが高まると考えられます。

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