仲代達矢さん (c)朝日新聞社
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 大河ドラマ「新・平家物語」は10周年記念作品の名に恥じない超豪華なキャスティングだった。

 仲代さんの清盛以下、妻時子に中村玉緒、弟時忠に山崎努、阿部麻鳥に緒形拳、朱鼻伴卜に藤田まこと、源頼朝に高橋幸治、後白河天皇→後白河法皇に滝沢修、平忠盛に中村勘三郎、池ノ禅尼に水谷八重子、祇園女御(泰子)に新珠三千代、信西入道に小沢栄太郎、常盤御前に若尾文子、建礼門院徳子に佐久間良子、以仁王に北大路欣也、北条政子に栗原小巻、木曾義仲に林与一、藤原忠実に森雅之などなど、列記すればキリがない。

 正室時子に扮した中村玉緒と側室常盤御前に扮した若尾文子のふたりは1960年代の日本映画界を代表すろ人気スター。特に中村玉緒は二代目中村鴈治郎を父に、四代目坂田藤十郎を兄に持つ梨園の出身で、夫の勝新太郎とともに大映を支えた。78歳の現在でも強烈な天然ボケキャラクターでドラマ、舞台、CMで活躍しているのを知らない人はいないだろう。

「新・平家物語」のキャスティングが発表されたのは1971年。

 日本初の武家政権を打ち立てた平清盛に扮した仲代達矢さんは当時のことを次のように回想する。

「あまり人に言ったことはないのですが、大河ドラマ2作目の『赤穂浪士』のときにもオファーをいただきました。しかし当時は一年の半分は演劇、あとの半分は映画と決めていたので出演できませんでした。そのとき僕は31歳で、千田(是也)先生演出の『ハムレット』、黒澤明監督の『天国と地獄』に出ていたころですから、精神的・時間的にテレビに向いていなかったんです」

 それから8年後、40歳を目前にしていた仲代さんは、平清盛役を打診される。

「正直いって平清盛についての深い知識はありませんでしたが、どちらかというと悪人というイメージが強かったですね。ところが演ずるに当たった読んだ吉川さんの原作では、清盛という人は家庭的な面もある人情家として描かれていて共鳴できるところがありました。それと、勉強家でも秀才でもない点が僕とそっくりなんですよ(笑)」

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