そんな相手の返事から、旅が好きな人なのかな、おしゃれが好きなのかな、と新たな話題の入り口が見えてきます。
「旅行が好きなんですか? どちらへ?」
「実は母と一緒に京都へ行ったときに……」
このように話題を広げていけば、「気まずい」どころか、楽しい会話が始まります。
メッセージがどーんとプリントされたTシャツなどはネタの宝庫です。以前、番組スタッフが「Crocodile Hunter(ワニハンター)」と書かれたTシャツを着ていました。それって「オーストラリアに行ってきました!」と言っているようなもの。こんな絶好のボール、思い切り振らなきゃ申し訳ない。
「夏らしいTシャツじゃないですか!? どこかへ行ってきたのですか?」
案の定、取材でオーストラリアへ行ってきたということで、ひとしきりお土産話に花が咲きました。何かのメッセージだったり、お気に入りのアーティストの名前だったり。Tシャツはその人の好きなものがストレートに表れていることが多いので、使わない手はありません。
まずは相手のことを観察してみる。そこから「逆算すること」が私にとっての出発点です。
まわりの景色だって立派な話題になります。たとえば気まずい相手と一緒に電車のホームに立っているとしたら、「新入生のシーズンですね」「今日はコートなしの人も多いですね」など。ただ見たままを言っても違和感はありません。情景描写で全然構わないのです。
電車に乗り込んだ後も、黙って吊つり革を持っているのはやはり気まずい。ならば、車内に乗り合わせた人たちについての感想だったり(「あちらの学生さん、カバンからしてバレーボール部でしょうかね」とか)、週刊誌の中吊り広告を見て「あの記事、ちょっと気になりません?」と振ってみたり。
「最近の車内広告って『毛』関係の宣伝が多いですよね。脱毛か増毛か、ですよね」
「言われてみれば、たしかに」
なんて笑ってくれればもうけもの。もちろん、デリケートな話題には、触らぬ神にたたりなし、ですが、「見たまま」が話題になるなんて、こんなに楽チンなことはありません。
観察して、切り口を考える習慣さえ身につければ、この世の中すべて「話題の宝庫」。いつもの帰り道、どんなものに目を惹かれるか、あの人に話を振るなら何がウケるのか、いろいろ想像しながら見回してみてください。物事の見方の幅も広がります。